月報 「聴診器」 2009/07/01
新型インフルエンザ騒動がとうとう宗像市にもやってきましたね。感染は下火になっているようです。ただし、本番は秋以降の第二波といわれています。現に、今が冬のオーストラリアでは新型インフルエンザが猛威を振るっているそうです。今のところ、新型インフルエンザは、このまま弱毒性で若年者だけを標的にして入るようですが、秋になるまでにどんな変異をするか分かりません。僕も、注意深く情報を集めていくつもりです。
11 脳卒中① 脳の構造
今回からは脳卒中の話です。ただし、僕自身は脳の専門医ではありません。しかし、心臓や血圧といった循環器疾患と脳卒中は、密接な関係があるので、あえてとりあげることとしました。脳卒中は正式には「脳血管障害」とよばれ、「脳出血」と「脳梗塞」に分けられます。脳の血管が、破ければ脳出血が起こり、脳の血管が詰まれば脳梗塞が起こります。全く逆の病気のようですが、両方とも動脈硬化が関係している場合が多いのです。
脳はニューロンという神経細胞が140億個ほど集まって出来ている臓器です。全身から集まる情報をまとめ上げ、神経やホルモンを通して体のコントールを行います。思考や記憶も脳の働きです。ニューロンは沢山の手と長い一本足をもった構造をしています。この手でニューロン同士が連絡を取り合います。長い一本足は遠くの場所まで情報を伝える役割をしています。脳は、大きなキャベツと小さなキャベツが重なったような構造をしています。上のキャベツが大脳、芯の部分が脳幹、下のキャベツは小脳になります。キャベツと異なるのは、芯が上下を貫いていることです。したがって脳幹部は大脳と小脳をつなぐ役目もしています。
脳幹部は非常に大切な部分です。呼吸や循環維持など生命活動の動きをコントロールしています。脳幹部は人間の生命維持装置なのです。小脳では体のバランスや、手足の動きの協調性をつかさどっています。大脳は外側の大脳皮質と奥にある間脳に分けられます。間脳には視床や視床下部が含まれます。性欲や食欲などと関係している部位、情動に関する部位、スムーズな運動を行う部位、ホルモンで体を統率する部位など多彩な機能があります。大脳皮質からでてくる神経線維が通る場所でもあります。
外側の大脳皮質はニューロンの本体部分を多く含み、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉などに分かれます。このうち、前頭葉は意志や思考を担当し、頭頂葉は体の感覚と動きを担当し、側頭葉は記憶や聴覚を担当し、後頭葉は視覚を担当します。大脳は左右の二つに分かれています。右脳では左半身の動きや感覚を、左脳では右半身の動きや感覚をコントロールしています。言語の理解は左側頭葉で、計算は左頭頂葉で行われていることが多いそうです。
上野循環器科・内科医院 上野一弘