月報 「聴診器」 2010/09/01
暑い日が続きますね。そろそろ、暑いのにも飽きてきました。新聞報道によれば10月ごろまで気温は高めに推移するそうです。秋は遠いですね。
13 検査 ①血液検査 一般検査
今までは病気の話をしていましたが、今回から少し見方を変えて検査の説明をします。まずは、血液検査です。検査項目には、それぞれ複数の意味があり、我々は多くの検査を総合的にみて判断しています。簡単には説明しにくいところもありますが、ここでは、大雑把に説明します。
TPやアルブミンは栄養状態を表します。食事量が足りなかったり、病気で体が消耗すると減ってきます。GOT, GPT, LDH, ALP. γ-GTPなどは肝臓の状態を表します。これらの物質は肝臓に含まれており、肝臓が炎症を起こしてこわれると血液中に漏れ出てきます。GOT, GPT,LDHは肝臓の中心的な部位の障害を表し、肝炎や肝不全の指標になります。ただしLDHは、ほかの臓器にも含まれ、特異度が低い検査です。γ-GTPやALPは胆管周囲の障害を表し、胆管炎やアルコール性肝障害の指標になります。ビリルビンは肝臓から排泄される赤血球の残骸で、黄疸の原因になります。肝臓が悪くなればこのビリルビンが排泄されなくなるため血液中の多く含まれ、高値になります。ChEは肝臓で作られるたんぱく質で肝臓の合成能力を反映します。栄養不足や高度の肝機能低下で低値になります。逆に脂肪肝などでは高値になります。
コレステロールや中性脂肪は血液中の脂質を表します。高値の場合は脂質異常症の可能性があります。食後は正常の人でも中性脂肪は高値になります。中性脂肪値を正確に知るためには9時間程度の絶食が必要と言われています。
Cr, BUNは腎機能を反映します。脱水などでも高値になる場合があります。UAは尿酸のことです。UAが高い状態が続くと、痛風や腎臓病になったり、動脈硬化が進んだりします。Na,K,Cl,Caは電解質です。これらは微量な金属イオンで血中に一定の割合で存在しています。腎不全やホルモン病でこの割合が崩れます。Naが異常に低値になると意識障害が出現します。Kが低値になると筋肉が動かなくなったり、不整脈が出現します。Kが異常に高くなると心臓が止まることもあります。Caが低下するとこむら返りが多くなります。Caが高くなりすぎるとむかつきが出現します。
CPKは心筋や骨格筋に含まれる酵素です。激しい運動や、うち身で筋肉が壊れると高値になります。心臓の筋肉にも含まれていますので、心筋梗塞でも高値になります。コレステロールを下げる薬の副作用や甲状腺機能低下症でも高値になります。
白血球やCRPは感染症や炎症があると高値になります。白血球が15000以上、CRPが10以上の時は肺炎などの激しい細菌感染症を疑います。ウイルス感染では白血球は正常であったり下がったりします。赤血球やHbは貧血の指標になります。血小板は止血時に働きますが、重症感染症や膵炎で低下します。
血糖値は文字通り血中の糖を表します。食前は100以下で食後は140程度まで上がります。糖尿病で高値になりますが、骨折や肺炎などひどい病気になった時にも少し上がります。逆に低栄養状態などでは血糖値は下がり、血糖が下がりすぎると意識がなくなることもあります。持続的に血糖値が上がればHbA1cが高くなります。
上野循環器科・内科医院 上野一弘