月報 「聴診器」 2013/09/01
猛暑が続いていますが、皆様大丈夫でしょうか。今年は今までにない猛暑で、熱中症も非常に多かったです。特に、外の現場で作業をされる方に脱水症状が多かったようです。かなり気を付けていて水分はとられていたようですが、猛暑が予想をうわまったようです。
17 心エコー② 心エコーで分かること
前回から超音波検査について説明しています。では、実際の心エコーはどのように行っているのでしょうか。心エコーを行う場合は部屋を暗くします。これは、モニターが見やすくなるためです。手足に心電図用の電極を付けます。心エコーでは心拍数の把握や収縮のタイミングを見るために心電図と同時に記録する必要があるためです。姿勢は左を下向きに斜めに寝てもらいます。心臓は左側にありますが、そのまま仰向けに寝ると背中のほうに移動してしまいます。左下にして寝ていただくと、多少心臓が胸壁に近づき、超音波検査がしやすくなります。痛みを伴わない検査で、15-20分程度で終わります。ただし、肥満のある方、肺気腫のある方、胸部の手術をした後の方はきれいな画像が得られにくく時間がかかる場合があります。
心エコーでは、心臓の大きさや壁の厚さが直接わかります。レントゲンや心電図でも「心拡張」や「心肥大」の所見が得られますが、それらはあくまで間接的なものです。例えば、レントゲンで心拡張を認めても、必ずしも心臓が大きいわけではありません。レントゲンは一種の影絵ですので、心臓の位置や向きで大きく見えることがあります。逆に本当は心臓が大きくてもレントゲンでは心拡張がわからない場合もあります。心電図で心肥大の所見があっても、心肥大でない場合があります。壁が厚くなくても、心筋障害があったり狭心症があれば同じような心電図波形になります。心エコーでは位置や向きにとらわれずに、直接心臓の大きさや壁の厚さを計測できます。また、異常な構造物があれば見つけることもできます。血栓や弁についた菌塊を見つけることもあります。
リアルタイムに心臓の様子がわかりますので、心臓の動きもわかります。心筋梗塞では心臓の一部の動きが悪くなっています。心エコーでは、心臓の場所の動きが悪いかがわかります。心筋症などで心臓全体の動きが悪くなっていても、どれくらい動きが悪いのかを測定することができます。弁の動きも観察できます。きちんと開いているのか、石のように固くなっていないか、弁の数はそろっているか、閉じるときにずれていないかなどをチェックします。
ドップラーを利用すればさらにいろんなことがわかります。カラードップラー検査では血液の流れる方向がわかりますので、血液が逆流していれば、様子を観察することができます。弁膜症では逆流の程度や逆流の原因もある程度推測ができます。また、弁が開かなくなっていれば、速くなった血流がジェットのように観察されます。先天性心疾患で心臓に穴が開いている様子もカラードップラーで鮮明に記録できます。
ドップラーでは流速も測定することができます。流速を測定できればある部位を流れる血液量を測定することもできます。例えば、左室の出口の直径と流速パターンがわかれば、拍出量を求めることができます。また、流量が同じであれば、通る場所が狭くなるほど流速は早くなります。弁が狭くなっていれば、流速を測定することで、圧格差や弁口面積を測定することができます。
上野循環器科・内科医院 上野一弘