月報 「聴診器」 2016/04/01
今月で、心臓リハビリテーション施設UPが開設して一年がたちました。82名の患者さんにご利用いただきました。心不全、不整脈、心筋梗塞、大動脈瘤、弁置換術後など重症心疾患を有する方も多数参加していただきましたが、特に大きなトラブルもなく一年を乗り切ることができました。心臓リハビリテーションの効果は、ほぼすべての患者さんで得ることができました。特に、重症心不全の患者さんで効果が顕著だったようです。他の医療機関からも紹介していただきましたが、紹介元の医師もリハビリテーションの効果におどろかれていました。これも、支えていただいたみなさんのおかげはもちろんですが、スタッフの力によるものが大きかったと思います。
当院のスタッフはみな勉強熱心で、やさしく、誠実な人ばかりです。皆が献身的に仕事をしてくれたおかげで、心臓リハビリテーションの成功があったと思います。素晴らしいメンバーと一緒に仕事ができることに、日々感謝をしています。
21 心筋梗塞2 ③心筋梗塞の検査-治療 カテーテル検査
心電図や心エコーなどで心筋梗塞と診断されれば、カテーテル検査を行います。カテーテル検査は細い管を血管内に入れて行う検査です。細い穴から造影剤を入れたり、圧力を測定したりします。急性心筋梗塞ではスワン・ガンツカテーテルというものをよく使用します。これは、静脈から挿入して、肺の血圧を測定したり、心拍出量を測定するときに使用します。重症例では血行動態を把握するために2-3日入れっぱなしの時もあります。冠動脈造影も行います。カテーテルの先端から造影剤を冠動脈に流して、レントゲンで動画を撮影する方法です。狭心症の時にも説明しましたね。心筋梗塞の時は冠動脈がつまっていますのでより慎重に行う必要があります。冠動脈入口に病変がある可能性もありますので、初めは大動脈内で造影剤を流して入口部を確認します。異常がなければ、左右の冠動脈にカテーテルを挿入して、造影剤を流し、多方向から撮影します。そこで、閉塞している血管がわかります。
昔は、この段階でいったん検査を終了することもありましたが、最近ではほとんどの症例でそのまま治療に移行します。まず、カテーテルを少し太めのものに交換します。閉塞部位を有する血管にカテーテルの先を入れたら、細いワイヤーで閉塞部をつつきます。多くの場合は、閉塞したばかりで、閉塞の本体は血栓だったりやわらかいプラークだったりします。細いワイヤーでつつきますと閉塞部位を通過させることができます。閉塞部をワイヤーが通過しても病変部には高度狭窄が残ったままなのでこの部位を3-4mmの風船で広げます。術者は風船をしぼませた状態で病変部に運びます。そこで高圧をかけて風船を膨らまします。風船が広がれば、病変も広がってくれます。最近ではそのままステントいう金属製の網を入れることが、主流になっています。ステントは細く折りたためるようになっており、折りたたんだ状態で縮めた風船に装着されています。これを先ほどと同じように病変部に持っていきます。風船を拡げた後に、再び縮めて風船だけ抜くと、血管を広げるような形でステントが残るようになります。
閉塞部の血栓があまりにも多い場合は、血栓吸引や血栓溶解剤を使用することもあります。また、病変部が複雑であったり、入口部にあまりに近い場合は風船治療は行わず、緊急バイパス手術をするときもあります。
上野循環器科・内科医院 上野一弘