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聴診器

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月報「聴診器」7月号発行しました!

月報 「聴診器」 2024/07/01

今年は梅雨の入りが遅かったですね。おかげで、6月上旬は過ごしやすかったと思います。ただし、梅雨の入りが遅いと海水温度の関係で豪雨になりやすいそうです。宗像市のハザードマップで確認すると山田川が氾濫した場合、当院は1メートルほど浸かってしまうようです。電子カルテのサーバーを高いところに置いたり発電機を買うなどの対策をとっていますが、もし大規模な災害が起これば診療ができなくなるのではないかと心配しています。そんな時でも、薬手帳があれば他の医療機関で処方をしてもらえると思います。薬手帳は大事に保管しておいてください。

 

32 検査2 放射線検査 シンチグラムなど

前回まではX線を照射して行う検査について説明しました。放射線検査では放射線物質を使用して行う検査もあります。代表的なものはシンチグラムです。

シンチグラムでは放射性同位元素を使用します。原子の性質は陽子と電子の数で決まりますが、原子の中には中性子の数が異なるものがあり、正常の原子とは重さが異なります。この原子のことを放射性同位元素といいます。この中性子が余分にある原子は不安定ですので、原子核が崩壊して別の原子になります。この際にガンマ線をはじめとした放射線を出します。この放射線を検出して画像にする検査がシンチグラムです。

放射性同位元素は基本的には正常の原子と同じような動きをします。心筋シンチグラムではテクネシウムの同位元素を使用します。テクネシウム99mはガンマ線を出す放射性同位元素ですが、これで化合物を作ると血流にのって心筋に取り込まれます。この状態で、安静時にガンマカメラで撮影すると血流のある組織が写ります。次に、運動をさせて撮影をすると血流の乏しい部位は写らなくなります。結果的には、正常の心筋、血流の乏しい心筋、完全に壊死している心筋がわかります。この所見と冠動脈造影の所見を組み合わせて治療方針を決めます。冠動脈の狭窄部位に一致して血流の乏しい心筋を認めれば、血行再建術の対象になります。冠動脈に狭窄があっても心筋が完全に壊死していれば血行再建術を行っても効果が乏しいと予想されるので、血行再建術の対象にはなりません。シンチグラムでは脳血流や肺血流も見ることができます。骨の検査に使用する99mTcピロリン酸シンチを使用すると心アミロイドーシスの診断を行うことができます。ガリウムシンチは心サルコイドーシスの診断に有効です。

PET検査は厳密にはシンチグラムとは別の検査ですが、やはり放射性同位元素を使用する検査です。PETでは放射線の検出器機器がシンチと異なるため、CTのように断面を表示することができます。三次元構成にすることも可能です。がん検診などで使用されるFDG-PET検査ではフッ素18という放射性同位元素を使用します。これは陽電子(普通の電子は陰性)を放出します。フッ素18を使用してFDGというブドウ糖によく似た物質を作り体に投与します。がん細胞では代謝が亢進していますので、ブドウ糖が盛んに取り込まれ、FDGも同様に盛んに取り込まれます。そのため、がんがあれば集積亢進部位として画像に反映されます。ただし、もともと代謝が亢進している部位や尿路系は正常でも集積が亢進しているので、これらの部位のがんは検出することができません。フッ素18FDGを作るためにはサイクロトロンという装置で粒子を加速して作りますが、自前でサイクロトロンを用意して、健診に役立てる施設もあります。

     上野循環器科・内科医院  上野一弘

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