月報 「聴診器」 2024/09/01
結局、ほぼ一か月猛暑が続きましたね。「危険な暑さに~」のフレーズもだいぶ聞き飽きてしまいましたが、確かに熱中症の人も多く、本当に「危険な暑さ」だったようです。当院でも連日点滴を行っていました。一か月半の間は、まとまった雨も降りませんでしたね。それでも、ダムの貯水率は90%程度維持できていたのは、行政の利水事業に先見の明があったのでしょう。
9月には駐車場の工事のためお休みをいただいています。皆さんにはご面倒をおかけしますがご理解のほどよろしくお願いいたします。
32 検査2 カテーテル検査
CTやMRIでも造影剤を使用して血管の検査をすることがありますが、もっと血管の様子を詳しく見たいときには血管造影検査を行います。
血管造影検査ではカテーテルという細い管を血管の中に入れて行います。カテーテルを足の付け根や手首などの浅い部分にある血管に入れます。カテーテルの中にはガイドワイヤーをいれて、ガイドワイヤーのしなやかな先端を先行させて進めます。血管は複雑に枝分かれしていますが、解剖学的知識とガイドワイヤーの曲がった先端を利用して、目的の血管までカテーテルを進めます。目的の部位までカテーテルが到達できれば、ガイドワイヤーを抜いて造影剤を流します。造影剤を流しながらレントゲン撮影をすると血管が写しだされ、血管の走行や狭窄具合などを確認します。狭窄部のより細かな形も詳しく知ることができます。血管が詰まった場所に別の血管から血流があるかどうかもわかります。
よく観察するためには、いろんな工夫がされています。心臓の血管を撮影するときは、撮影装置をぐるぐる回して様々な方向から動画で撮影します。頭の血管や腹部の血管ではDSA(Digital Subtraction Angiography)という方法が使われます。これは血管造影後のデジタル映像から血管造影前のデジタル映像を引き算することで、血管だけを強調して画像化する技術です。昔は微妙に撮影方向を変えて3D表示にすることも行われていましたが、今は全然やっていないようです。
心臓の血管の検査では血管造影の手技を利用してほかの検査をすることがあります。たとえば、カテーテルの中から細い超音波検査器を血管に入れて検査を行うことができます。血管内エコーと呼ばれます。血管の厚みや、動脈硬化の性状、ステントの広がり具合などは血管造影だけでは分かりません。血管内エコーを使うとこれらのことがよく分かるようになり、治療に役に立ちます。
流速計を入れることもあります。狭窄の前後では血管内の流速が異なるため、血流速度を測定することで狭窄の程度を知ることができます。小さな内視鏡を入れることもできます。ただし、内視鏡を入れただけでは血液しか映りませんので、透明な液体を同時に流します。光干渉計を使用して血管のより詳細な断面図を見る場合もあります。
カテーテルの先から採血をする場合もあります。血液の酸素濃度を複数の場所で測定し、酸素消費量も測定すると心拍出量を正確に測定することができます。また、心臓の壁に穴が開いていると思わぬ場所で酸素濃度が上がります。これを利用して、先天性心疾患の診断をしたり、重症度を判定します。ICUなどでは継続的に肺動脈酸素濃度を測定します。血行動態と肺動脈酸素濃度は密接な関係があるからです。ホルモン産生腫瘍が疑われる場合は、カテーテルを使用して局所のホルモン濃度を測定します。
上野循環器科・内科医院 上野一弘