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月報「聴診器」1月号発行しました!

月報 「聴診器」 2023/01/01

あけましておめでとうございます。コロナ禍で迎える3回目のお正月になります。新型コロナウイルス感染症は大変な災厄ですが、徐々に日常が戻ってきていることも実感しています。当初、未知のウイルスの出現に社会はパニック状態になりました。有効な対策もなく、社会活動を停止させることでしか対処できませんでした。静まり返った駅や街を覚えている方も多いでしょう。医療機関も混乱を極めました。治療法は対症療法のみで重症化率や死亡率は今よりも各段に高い水準でした。検査体制も十分でなく、発熱対応を行う施設はごくわずかでした。感染防御を行うにしても物資が足りず、数少ないマスクを数日間使いまわしていました。

今は第8波の真最中で、相変わらず医療機関はてんてこ舞いです。それでも、街は人であふれ多くの人が旅行を楽しんでいます。ワクチン接種によって重症化率や死亡率が下がり、治療薬も開発されています。マスクなどの感染防御材も充分にあります。感染者数が多い時には医療機関もアクセスを制限せざるをえませんが、医療資源が有限であることを社会が受け入れられつつあるようにも思えます。今後も感染の波が来るたびに医療機関のキャパシティーを超える事態になると思いますが、医療も社会も徐々に対応を学び成長していけると思います。2023年はさらに成熟した対応が可能になると信じます。

懸念としては、変異株や他の新規感染症の勃興です。中国ではゼロコロナ対策を終了し感染爆発が起こっています。感染者が多くなれば変異株の出現する可能性が高くなりますが、病原性が高い変異株が出現すれば対策は数歩後戻りをします。また、SARS-CoV2以外にもパンデミックを起こす感染症の出現が危惧されています。グローバリゼーションにより世界が近くなると新興感染症が一気に広がる恐れがあります。新型インフルエンザやニパウイルスなど警戒されている感染症がいくつかありますが、今回のCOVID-19での経験が次のパンデミックに役に立てばよいなと思います。

30 脳卒中2 ⑧脳梗塞の治療

前回は脳出血の治療でしたので今回は脳梗塞の治療の話です。脳梗塞は血管が詰まってしまう病気です。血管が詰まってしまえば脳細胞が死んでいきます。脳梗塞の病態は、詰まる血管の部位によって大きく変わります。末梢の小さな血管が詰まった場合には症状が軽度のことがありますが、根元のほうの血管が詰まってしまうと大きな脳梗塞病変ができてしまいます。麻痺や機能障害が大きくなるだけではなく、脳がはれたり生命維持の機能が損なわれたりします。

20年ほど前から血栓を溶かす薬を積極的に使用するようになりました。この効果は劇的で、ほとんど麻痺が残らないこともあります。ただし、この治療は脳梗塞の超急性期にしかできません。長時間たつと詰まっていた先の血管がもろくなっています。ここで、血行がよみがえると出血する可能性があります。このため血栓溶解療法は発症後4時間半が限度と言われています。最近では、血管回収療法が発展してきており、これは発症後8時間まで可能だそうです。カテーテルで閉塞している血管を見つけると、ワイヤーやステントの形をした血管回収器具を使用して血管の再開通を行います。

いずれにしても治療開始が早いに越したことはありません。片側の麻痺やろれつが回らないなどの怪しい症状があれば、夜中でもすぐに病院へ行くのがよいと思います。この辺りでは、蜂須賀病院や福岡東医療センターがこの治療を行っています。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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