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月報「聴診器」2月号発行しました!

月報 「聴診器」 2025/02/01

年末年始のインフルエンザ大流行は大変でした。どの医療機関も多くの患者さんが押し寄せて、一部では混乱もあったようです。基本的には自然治癒する病気ですが、罹患した方からすると早く診断して治療してほしいものなのでしょうね。また、今回のインフルエンザでは重症化する人も多かった印象です。1月下旬になってインフルエンザはだいぶ下火になりましたが、代わりに新型コロナウイルス感染がじわじわと増えてきているのが気になります

 

33 最近の話題 ⑤医療とAIの続き

前回AIの話をしたので、今回はそのおまけです。昨年のノーベル物理学賞と化学賞はAI関連でした。物理学賞はAIの根幹ともいえる「人工ニューラルネットワーク」の基礎を築いたヒントン氏とホップワールド氏に贈られました。人間の脳では神経細胞がネットワークを作り情報を処理しています。人工ニューラルネットワークは人間の脳をモデルにしたシステムで、膨大な量のデータから自動的にコンピューターが学習を行います。

化学賞は「アルファ・フォールド」を開発したディープマインド社のハサビス氏とジャンパー氏などが受賞しました。アルファ・フォールドはAIを利用してタンパク質の三次元的構造を予測するプログラムです。生物の体はほとんどタンパク質で出来ています。筋肉や骨だけでなく、酵素やホルモンもタンパク質です。タンパク質はDNAの情報をもとに作られます。まず、DNAの一次元的情報が、アミノ酸配列という一次元情報に翻訳されます。この段階では「Glu Ile Val Glu Gln・・・」のようにアミノ酸の並び方しか分かりません。この紐のようなアミノ酸の鎖が、水への親和性の有無やプラスとマイナスの特性などで折りたたまれ三次元構造になり、たんぱく質としての機能を持つようになります。DNAの情報については、技術の進歩のおかげで比較的短時間で解析ができるようになりましたが、そのDNAがコードするタンパク質がどんな構造をしているのか、どのような働きをしているのかはなかなかわかりません。旧来はタンパク質を結晶化してX線解析をしたり、低温電子顕微鏡を利用したりしていましたが、これらの方法は時間もコストも膨大にかかります。アミノ酸配列から三次元構造を推測できればよいのですが、たんぱく質の折りたたまれ方はたくさんの可能性があるため膨大な計算が必要になります。しらみつぶしにやる方法では、一つのタンパク質の三次元構造を解析するためには何十年もかかるそうです。この状況を打破するために、1993年にタンパク質立体構造解析コンテストが始まり多くの分子生物学者が参加しました。なかなか、ブレイクスルーは生まれませんでしたが、2018年の大会では分子生物学業界とは一見無関係なグループが優勝を勝ち取りました。それこそが、ディープマインド社です。ディープマインド社は開発したAIがゲームや囲碁で人間のチャンピョンに勝ったことで有名でした。ディープマインドこのAIを応用した「アルファ・フォールド」を開発しアミノ酸配列からタンパク質の三次元構造を予想するのに成功しました。

タンパク質の三次元構造が予想できるようになると、生理学的作用や病態の解明に有用と期待されています。また、特定のたんぱく質に作用する物質を開発するヒントにもなりますので創薬にも応用できるでしょう。2024年には「アルファ・フォールド3」も発表されています。これは、たんぱく質だけでなくあらゆる生体物質の構造が分かるそうです。

      上野循環器科・内科医院  上野一弘

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