• お気軽にご来院・ご相談ください。
  • FAX:0940-33-3614
  • 福岡県宗像市須恵1丁目16-19

聴診器

choushinki

MENU

月報「聴診器」3月号発行しました!

月報 「聴診器」 2025/03/01

今年の冬は例年になく寒かったですね。ここ数年は比較的暖かい冬でしたが、今季は強い寒波が次々に襲来して辟易しました。例年通り感染症の方も多かったのですが、今年は年明けから心臓発作で受診される方が多かった印象でした。

 

33 最近の話題 ⑥ポリジェニックスコア  循環器コンソーシアム

病気の種類によっては1つ、もしくは2~3個の遺伝子変異が原因のことがあります。例えば筋ジストロフィーや血友病などです。これらについてはゲノム解析が進むことで診断率も上がり、病態の解明につながると期待されています。治療についても、病態に即した酵素補充療法やシャペロン療法が開発されていますし、遺伝子治療も検討されています。一方、高血圧や虚血性心疾患などは、かなり多くの遺伝子が関与しています。病気によっては数万の遺伝子が関与している場合もあるようです。この場合、ある遺伝子に異常があるからと言って病気なるわけではありません。したがって、全ゲノムを調べても将来的に心臓病になるのかどうかは判然としません。しかし、複数の遺伝子に異常があると病気なりやすくなるようです。そこで、最近はポリジェニックスコアと言いう概念が提唱されています。これはターゲットの遺伝子において、標準のゲノムから変異している数を調べることで算出されます。標準の遺伝子からどれぐらい数の変異があるかを統計的に計算して複数のグループに分け、表現型と照らし合わせて予後を予測するのです。。現段階ではデータの基礎となる母集団が少ないのですが、それでもポリジェニックスコアと生活習慣病との間にある程度の関連があることが分かっています。将来的には個々人のポリジェニックスコアをもとに生活習慣改善の指導や薬物介入の重みづけができることが期待されています。

ビックデータや多量のゲノム情報が手に入るようになってくると、病態の認識が変わってくることがあります。例えば、心筋症です。これまで心筋症はざっくりと心臓の形と機能で拡張型心筋症や肥大型心筋症に分類されてきました。しかし、遺伝子解析が進むようになると同じように見えていた拡張型心筋症の中にも様々な成因があることや、遺伝子の変異があることが分かってきました。先天性心疾患や肺高血圧症でも同じようなことが分かっています。同じよう見えていた病気でも、遺伝子変異の違いによって予後の差が出ることや治療に対する反応が違うこともあるようです。同じように見えていた拡張型心筋症の患者さんでも細かく調べていくと、薬が効きやすいタイプとそうでもないタイプがいるのです。これは新薬の開発にとって重要な問題です。ある新薬を開発しても、薬が効くタイプとそうでもないタイプ全員に薬を投与しても効果がはっきりしせず、新薬として認められなくなります。しかし、事前に効きやすそうであろうタイプにだけを対象に臨床試験を行えれば、薬の効果が分かりやすくなります。

しかし、このような多様性を理解して臨床の現場に有効に生かすためには膨大なデータを有効に利用する必要があります。実際、医療情報をデジタル化して国全体で管理している国では説得力ある論文を発表しています。日本ではいくつかの大学や病院が個別にデータを集めていましたが、より網羅的かつ戦略的にデータを集めて処理する必要があります。そこで、2023年に日本循環器学会が中心となり「循環器コンソーシアム」が発足しました。すぐに治療に結び付くわけではありませんが、循環器診療の大きな飛躍つながるものと期待しています。

      上野循環器科・内科医院  上野一弘

発熱や風邪症状のある方は、来院前に電話でご連絡をお願いします。

お電話
WEB予約