月報 「聴診器」 2022/06/01
新型コロナウイルスワクチンは4回目の接種が準備されています。対象は60歳以上か基礎疾患のある方になります。基礎疾患は、高血圧、心臓病、肺疾患などになります。60歳上の方には自動的に接種券が市から送られてきますが、60歳未満で基礎疾患のある方が接種を希望する場合には自分で申請をする必要があります。当院では7月に個別接種を行う予定としています。予約はコールセンターを介してのみになります。
新型コロナウイルスワクチンについては、新しく武田社製のワクチン(ノババックス)が認可されました。これは、組み換えタンパクワクチンという種類になります。組み換えタンパクワクチンは、人工的に合成されたウイルス蛋白の一部を利用したワクチンで、他のウイルスに対するワクチンではすでに使われている技術です。ファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンとは異なる種類のワクチンになりますので、mRNAワクチンが合わずに2回目3回目の接種ができなかった方も接種することができます。福岡県では、6月から天神で接種が可能になります。接種を希望される方は、福岡県武田社ワクチン接種予約受付コールセンター(092-406-911)に連絡してみてください。
30 脳卒中① 脳の構造
今回からは脳卒中の話です。心臓や血圧といった循環器疾患と脳卒中は、密接な関係があります。脳卒中は正式には「脳血管障害」とよばれ、「脳出血」と「脳梗塞」に分けられます。脳の血管が、破ければ脳出血が起こり、脳の血管が詰まれば脳梗塞が起こります。動脈硬化が進むと両方とも起きやすくなります。
脳はニューロンという神経細胞が140億個ほど集まって出来ている臓器です。全身から集まる情報をまとめ上げ、神経やホルモンを通して体のコントールを行います。思考や記憶も脳の働きです。ニューロンは沢山の手と長い一本足をもった構造をしています。この手でニューロン同士が連絡を取り合います。長い一本足は遠くの場所まで情報を伝える役割をしています。
脳を大きく見れば、大脳、小脳、脳幹部などに分けることができます。脳幹部は非常に大切な部分で、呼吸や循環維持など生命活動の動きをコントロールしています。脳幹部は人間の生命維持装置なのです。小脳では体のバランスや、手足の動きの協調性をつかさどっています。大脳は外側の大脳皮質と奥にある間脳に分けられます。間脳には視床や視床下部が含まれます。性欲や食欲などと関係している部位、情動に関する部位、スムーズな運動を行う部位、ホルモンで体を統率する部位など多彩な機能があります。大脳皮質からでてくる神経線維が通る場所でもあります。
外側の大脳皮質はニューロンの本体部分を多く含み、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉などに分かれます。このうち、前頭葉は意志や思考を担当し、頭頂葉は体の感覚と動きを担当し、側頭葉は記憶や聴覚を担当し、後頭葉は視覚を担当します。大脳は左右の二つに分かれています。右脳では左半身の動きや感覚を、左脳では右半身の動きや感覚をコントロールしています。言語の理解は左側頭葉で、計算は左頭頂葉で行われていることが多いそうです。
上野循環器科・内科医院 上野一弘