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月報「聴診器」7月号 発行しました!

月報 「聴診器」 2018/07/01
今年の梅雨は、雨が少ない印象ですね。しかし、梅雨は後半に豪雨になることが多いようです。昨年7月5日の九州北部豪雨も記憶に強く残っています。災害はいつどこで起きるか分かりません。難しいことですが、常日頃から当事者意識を持っていたいと思います。

25 先天性心疾患⑤ ファロー四徴症
前回までは先天性心疾患のなかでも多い心房中隔欠損症、心室中隔欠損、動脈管開存症などを説明してきました。これらは、比較的単純な疾患で、一部分の構造に異常があります。先天性心疾患の中には複数個所の異常があるものがあります。代表的なものがファロー四徴症です。ファロー四徴症は、大動脈騎乗(大動脈が右心室と左心室にまたがっている状態)、心室中隔欠損症、肺動脈狭窄、右室肥大の四つの奇形が合併する疾患です。ファロー四徴症でも、全身から帰ってきた血液は右心房から右心室に流れます。一部は肺動脈を通って肺を循環して酸素を取り込みます。ここで、肺動脈が狭くなっているので右心室の圧力が非常に高くなります。このため、右心室の血液の一部は心室中隔欠損孔を通って左心室に流れます。右室からの静脈血と左室の動脈血は混じりあい騎乗した大動脈に流れます。混合した血液は、通常の動脈血よりも酸素濃度が低く、血液は少し青黒くなります。この混合血が全身を循環しますので、ファロー四徴症では幼少時から全身が青黒く見えるようになります。このような状態はチアノーゼと呼ばれ、チアノーゼを呈するような先天性心疾患児はBlue babyとも呼ばれていました。
ファロー四徴症は、長らく、不治の病として患児は苦しく短い生涯を余儀なくされていました。ファロー四徴症の治療は、一人の女性医師の登場を待たねばなりませんでした。ハーバード大学の経済学の教授の娘として生まれたヘレン・トーシックは、幼少より優秀で医師の道を志します。ハーバードの医学部を希望しますが、女性だからとの理由で断られてしまいます。アメリカでも1920年代には多くの医学部で女性を受け入れてなかったんですね。結局、女性を受け入れていた数少ない医学部の一つのジョンズ・ホプキンス大学に入学します。その後、小児科医となったトーシックは先天性心疾患の研究を始めます。このとき、レントゲン透視による診断法を確立し、ファロー四徴症の病態を解明します。
前回、動脈管開存の説明をしたことを覚えているでしょうか。肺動脈と大動脈をつなぐ動脈管が、生後も遺残してしまう病気です。ファロー四徴症にこの動脈管開存症を合併した子供では、生後は比較的元気です。ところが、徐々に動脈管が閉じてくると病態が悪化し、チアノーゼがひどくなります。動脈管を通じて肺動脈流れていた血液が少なくなり、結果として酸素を含んだ動脈血が少なくなるためです。このことにトーシックは気づき、驚くべきことを考え付きます。ファロー四徴症に人工的に動脈管を作ったらよいではないか、と。当時の多くの医師も驚いたのでしょう、多くの病院や多くの外科医に断られてしまいます。ところが若手のブラロック医師だけはこの治療法の可能性を理解し、1944年に一例目の治療にこぎつけることができました。効果も驚くべきもので、瀕死の乳児の生命を救うことができました。
この手術はブラロック・トーシック手術(BT術)と呼ばれ、多くの子供の命を救いました。今ではファロー四徴症には開胸開心根治術が行われます。しかし、応急処置としていまだにBT術は行われています。                      上野循環器科・内科医院  上野一弘

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