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月報「聴診器」9月号 発行しました!

月報 「聴診器」 2018/09/01

8月は酷暑が続きましたね。ここまで、暑い日が続いたのは初めてかもしれません。全国的に見ても、熱中症が激増しました。救急搬送者、死亡者とも過去最高になりそうです。9月は涼しくなるといいですね。

 

26 循環器トピックス①  PCSK-9阻害薬とカナキヌマブ

今月からしばらくは「循環器トピックス」として、最近の話題を紹介しようとおもいます。あまり、一般向けの話題ではないので面白くなかったらすいません。

冠動脈硬化の進行抑制は循環器分野の最大の関心事の一つです。最近、この冠動脈硬化に進行抑制に成功した研究がふたつ発表されました。まずは、PCSK-9拮抗薬です。コレステロールにはいろいろな種類がありますが、LDLコレステロールがいわゆる悪玉コレステロールで動脈硬化を促進すると考えられています。これまでもLDLコレステロールを減らすことで冠動脈硬化の進行を抑制し、狭心症や心筋梗塞の再発を減らせることが分かっていました。しかし、どこまでLDLを減らすべきかは、はっきりわかっていませんでした。数年前まではLDLの治療目標は100以下でしたが、最近は70以下が目標値となっています。LDLはLDLレセプターによって肝臓に取り込まれますので、LDLレセプターが多いほうがより多くのLDLが取り込まれ、LDLが下がります。しかし、LDLレセプターは肝臓に取り込まれると分解されて、再利用できなくなります。このとき、PCSK9というタンパクがLDLレセプターにくっついて、分解を促します。PCSK9拮抗薬はこのPCSK9の働きを阻害する薬です。PCSK9阻害薬を投与するとLDLレセプターが分解されず、再利用されます。すると肝細胞の表面に多くのLDLレセプターが発現することとなり、結果的にLDLが下がります。この効果は劇的でLDLが30ぐらいまで下がります。そんなに下げて大丈夫かなと心配になりますが、PCSK9阻害薬を使用した臨床試験(FOURIER試験など)では有害事象は増えずに、虚血性心疾患の再発が減ることが確認されました。つまり、LDLを劇的に下げることで冠動脈硬化の進行抑制ができるということです。

では、動脈硬化の本質はコレステロールなのでしょうか?これに対しては、以前から「いや、血管の炎症こそが動脈硬化の本質だ」との意見があります。確かに、動脈硬化の部位にはマクロファージなどが多く、炎症系のサイトカインが多く発現しています。臨床的にも、高感度CRPが動脈硬化イベントの予測因子になることが知られています。そこで、CANTOS試験というものが行われました。これはカナキヌマブという薬で冠動脈疾患の再発予防ができるかどうかという試験です。カナキヌマブはIL-1βを阻害することで、血管炎症の主役であるIL-6を減らします。もともとは家族性地中海熱という珍しい病気の治療薬でした。これを、狭心症の再発予防に使おうというのですから、僕も最初はピンときませんでした。ところがCANTOS試験では虚血性心疾患の再発を減らすことに成功しました。ここで、大事なのではLDLなど脂質の値は変化がなく、炎症マーカーだけが低下していることです。つまり、LDLを減らさずに炎症を抑えることで冠動脈の進展抑制ができたわけです。

この二つの研究は大きなインパクトを与え、循環器業界ではみんなが話題にしています。今のところは、どちらの見方が正しいかは結論が出ていません。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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