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聴診器

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月報 「聴診器」 2010/05

月報 「聴診器」 2010/05/01

今年の春はいつまでたっても寒かったですね。風邪のかたも多かったですが、肺炎が多いのにびっくりしました。気候の変動が激しかったのに加えて、新年度のスタートで無理をしていた人が多かったからでしょうか。

 

12 血管病変 ②解離性大動脈瘤

前回は大動脈瘤の話をしました。今回は解離性大動脈瘤です。解離性大動脈瘤は大動脈瘤の一種ですが、病態が異なるので別に説明します。大動脈の壁は非常に丈夫で、内膜、中膜、外膜から成り立っています。高血圧などがあると、血管の壁が弱くなってきます。このとき、何らかの衝撃で血管内膜に亀裂が入り、中膜がはがれることがあります。こうなると、血管の壁に隙間ができ、血管が二重になります。これが、解離性大動脈瘤です。解離とは血管が裂けることですが、「さきイカ」のように血管が縦に分かれる方向に裂けるのではなく、「バームクーヘン」がはがれるように裂けていきます。ちょっと、分かりにくいですね。この裂けた隙間は偽腔と呼ばれます。偽腔には血圧という圧力受けて血液が流入していきます。このため、裂けている部分はどんどん広がっていくことになります。

解離性大動脈瘤は急激に発症します。通常は、激しい胸の痛みや背中の痛みが出現します。また、偽腔に血液がたまると、わきから出ている血管を圧迫します。脳に行く血管が圧迫されればふらつきなどの症状が出ます。手足にいく血管が圧迫されれば、手足が真っ白になって、脈が触れなくなります。腎臓に行く血管が圧迫されれば、尿が出なくなります。心臓の近くで解離が起これば、急性大動脈弁閉鎖不全症を発症したり、心臓の周りに血液がたまったりします。このときは、強烈に胸が苦しくなり、意識がもうろうとなります。大きな解離性大動脈瘤は、突然死の原因にもなります。

激烈な胸痛や背部痛で来院された場合に、心筋梗塞や膵炎が否定されれば、解離性大動脈瘤を疑います。急性大動脈弁閉鎖不全症による心雑音、急激な血圧の低下、脈の触れの左右差があればさらに解離性大動脈瘤の可能性が高くなります。確定診断のためにはCTスキャンが有用です。CTスキャンでは人体の輪切りを見ることができるので、大動脈の断面図も見ることができます。解離性大動脈瘤では、血管が二重になっているように見えます。解離が大きい場合には、胸部レントゲン写真やエコーでも解離性大動脈瘤を見つけることができます。

解離が大きい場合は、病院にたどりついても致死率が非常に高く、緊急手術の対象になります。解離が小さく生命の危険性が低い場合は、手術はせずに血圧のコントロールを行います。

解離性大動脈瘤は多くの場合は、高血圧に合併して発症します。しかし、もともとの血管のもろさが発症しやすさに関係していると考えられています。特にマルファン症候群という先天的な血管の病気がある家系では解離性大動脈瘤が高率に発生します。マルファン症候群は高身長、やせ形などの身体的特徴があります。まぁ、僕のような体形ですね。スポーツ選手の中にはマルファン症候群が隠れており、このことがスポーツ選手の突然死の原因の一つになっている可能性があります。

 

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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