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聴診器

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月報 「聴診器」 2012/01

月報 「聴診器」 2012/01/01

あけましておめでとうございます。昨年はいろんなことがあって大変でした。当院でも電子カルテの導入に四苦八苦しました。おかげさまでうまく稼働しているようです。診療についてはまだまだやりたいことがたくさんあります。少しずつ実現していきたいですね。

今年も皆様のお役にたてるように、スタッフ一同で頑張ります。

 

14 雑談 ②新しい高血圧治療

先月は新しいカテーテル治療の話をしました。今回はカテーテルで高血圧を治療する話から始めます。今でも、特殊な高血圧では手術やカテーテルの治療を行うこともあります。副腎腫瘍による高血圧では、副腎腫瘍を摘出する手術を行います。腎動脈狭窄症による高血圧では、狭窄した腎動脈をカテーテルで拡張させます。これらは、特殊なケースで、現在の医療で行われている治療です。普通の高血圧の治療には薬を使用します。僕らは、ずっと降圧薬を使用してきましたし、これからもそうだと思っていました。

2009年にドイツから、「難治性高血圧に対してカテーテルで手術を行った」との報告がありました。いわゆる普通の高血圧症で降圧薬が複数必要な症例に対して、カテーテルで治療行ったそうです。電極付カテーテルを挿入し、腎動脈付近に高周波を当てて熱するそうです。これで、腎交感神経が障害を受けます。腎臓はホルモンや自律神経を介して、全身の血圧をコントロールしていますが、交感神経は血圧を上げるほうに働く自律神経です。この腎交感神経が障害うけると血圧が下がるはずだというわけです。実際の研究では、腎交感神経焼灼術を受けた患者さんは一か月後には血圧が30mmHgほど低下したそうです。その後も1年以上降圧効果が続いているそうです。さらに、インスリンの効きがよくなるため、糖尿病も改善する可能性があるそうです。かなり、インパクトのある報告です。僕を含め多くの医者が「本当かいな」と疑っていましたが、その後の研究でも効果が確認されています。日本でも導入が検討されています。

2011年にはアメリカからも新しい治療の報告がありました。頸動脈を電気刺激して血圧を下げる方法です。人間は頸動脈に刺激を受けると、血圧と脈拍が低下する性質があります。柔道の絞め技やプロレスのモンゴリアンチョップはこの性質を利用して、相手を失神させています。治療では、ペースメーカーのような電気刺激を出す小さな機械を胸に入れます。電線を頸動脈に巻きつけて、微弱な電気刺激で血圧を下げようという方法です。思ったほどの効果はなかったそうですが、1年後には10mmHgほどの血圧低下が確認されたそうです。

2011年には日本からも新しい治療の可能性が提唱されました。高血圧のワクチン治療です。体内には、アンギオテンシンという血圧を上げるホルモンがあります。臨床で使用している降圧薬の何種類かはこのアンギオテンシンを阻害して血圧を下げています。アンギオテンシンはAg-II受容体を介して血管を収縮させ、血圧をあげています。このAg-II受容体に似たものを体に入れると、免疫が反応します。結果、Ag-II受容体を攻撃する免疫が成立します。免疫細胞にAg-II受容体を攻撃させ、アンギオテンシンの作用を鈍らせれば、血圧が下がるというわけです。まだまだ動物実験の段階ですが、大阪大学では非常に力を入れて研究しています。

様々な治療が実現すれば、高血圧治療のパラダイムシフトが起こるかもしれません。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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