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聴診器

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月報 「聴診器」 2012/03

月報 「聴診器」 2012/02/01

3月ですね。震災から一年がたとうとしています。被災地では本当に大変な一年だったと思いますし、いまだに生活はきびしいと思います。被災地には全国から復興のために人が集まっているようです。患者さんの中にも、ボランティアや仕事で現地に赴いた方々がいらっしゃいました。現地に行かずとも後方支援のため、多忙を極めた方もいらっしゃったと思います。皆さんの努力が実を結ぶといいなと願っています。

 

14 雑談 ④有名な大規模臨床試験

前回は大規模臨床試験の話をしました。今回は有名な大規模臨床試験をいくつか説明します。

(1)WOSCOPS:コレステロールの薬の効果を調べた試験です。スコットランドで行われました。コレステロールが高い人たちが、プラバスタチン(商品名メバロチン)を飲むと、心筋梗塞の波発症が3割低下することがわかりました。また、それまで「コレステロールを下げすぎると、がんや自殺が増える」と心配されていましたが、がんや自殺の増加は認められませんでした。この試験を皮切りに以後、続々とコレステロール治療薬の有効性を確認する試験が行われました。

(2)ALLHAT:降圧薬の効果を調べた試験です。降圧薬にはたくさんのグループがあります。それまで、製薬会社主導の試験では自社の製品が優れている結果ばかりが続いていました。多くの医師がこの結果には懐疑的でした。ALLHAT試験は製薬会社が関与できない形でデザインされました。結果は、降圧薬の種類によらず、血圧を下げれば下げるだけ予後がよいとわかりました。新しくて高い薬も有用ですが、昔からある安い利尿剤も同じように効果的なことが証明されたのです。

(3)UKPDS:イギリスで行われた糖尿病が対象の試験です。糖尿病では網膜症、神経症、腎症が三大合併症といわれています。UKPDSでは積極的に治療を行い、HbA1cを7.0以下にすれば三大合併症が減ることがわかりました。同じような試験が日本の熊本でも行われました。こちらのほうではHbA1cを6.4以下にすることで合併症がさらに減ることがわかりました。

(4)CONSENSUS:心不全を対象とした研究です。それまでは、心不全の治療に対して、いろいろな強心剤が使用されていましたが、どれも予後の改善にはつながりませんでした。この研究では降圧薬のエナラプリル(レニベース)を使用すると心不全患者さんの予後が改善することが明らかになりました。その後、類似薬でも同様の効果が確認され、心不全治療の進歩に大きな功績をもたらしました。心不全ではβブロッカーを使用したCOPERNICUS、スピロノラクトンを使用したRALESなども有名です。

(5)SPAF:心房細動が対象の研究です。心房細動が脳梗塞を起こすことはよく知られています。だいたい10%/年程度の発症率といわれています。脳梗塞の予防薬には、アスピリンとワーファリンの二種類がありました。ワーファリンは人によって投与量が異なり、採血も頻回で、食事制限もあります。医者にとっても患者さんにとっても面倒くさい薬です。その点、アスピリンは投与法が簡単なところが魅力です。SPAFは心房細動の患者さんを対象にした試験で、アスピリンとワーファリンの脳梗塞予防効果を比較しています。結果は、ワーファリンのほうが脳梗塞の予防効果に優れており、副作用も少ないことがわかりました。この後も条件を変えてアスピリンとワーファリンの比較試験がされていますが、すべての試験で、ワーファリンが優れているとの結果が出ています。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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