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聴診器

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月報 「聴診器」 2014/05

月報 「聴診器」 2014/05/01

4月は理研のニュースが世間を騒がせました。生命科学の端に連なる一員として非常に気まずい思いがしました。もっとも、医学の歴史を見てみると思い違いやへんてこなことがたくさんあります。そのうち、ここでご紹介できたらいいなと思います。

18 生活習慣 ④タバコ会社

タバコは寿命を縮める毒物ですが、合法的に販売されています。日本ではたばこ会社といえば日本たばこ産業JTです。明治時代にタバコが日本に入ってくると、まず民間の会社がタバコを販売し始めます。確実に大儲けができますので、明治37年「煙草専売法」が施行されタバコ販売は政府の管轄に入ります。戦後になると日本専売公社がタバコの販売を担います。タバコのほかにも、塩と樟脳を扱っていたそうです。昭和60年に民営化され日本たばこ産業となっています。

煙草と健康に関しては、ロジャー・スクールトン事件が有名です。ロジャー・スクルートンはイギリスの哲学者です。喫煙に関して利害関係のない立場から、様々な媒体でコラムを書いていました。しかし、その内容は喫煙擁護論で、WHOの禁煙キャンペーンに反対するものでした。実はJTから毎月多額の「お礼」が払われていたそうです。また、JTにタバコの健康被害に対して反論できるようなアドバイスをしていたそうです。ガーディアン紙に暴露され、コラムは打ち切りになったそうです。

海外ではブリティッシュ・アメリカン・タバコやフィリップモリスなどが有名です。アメリカでは1950年頃から喫煙と発がんに関連があるとわかっていました。アメリカがん協会やアメリカ心臓病学会が、政府とたばこ会社に、タバコが健康に悪いことを認め社会に告知するように要望をします。しかし、たばこ会社は、反対のデータをでっちあげたり、議会にロビー活動をしたりしてこの動きを妨害します。タバコに添付する「喫煙は癌を発症させ死を招く」との文章も「煙草は健康を害する恐れがある」とかなり温和な表現に変えさせられます。それでも、反論不可能なデータが次々と報告されると、フィルターを改良し発がん性を無くした、と称したタバコを売りだしました。もちろんフィルターでは発がん物質は除去できません。フィルターはフィルター部分の横に小さな穴が開いており、たばこを吸うときに空気を混ぜて味を薄くしているだけです。ただの、ごまかしですね。その後、喫煙により癌を発症した個人からの訴訟が相次ぎ、たばこ会社はアメリカでの勢力を徐々に落とし始めます。アメリカでの喫煙率は1960年代をピークに徐々に低下しています。日本でも1960年代には80%程度もあった喫煙率は20%台に落ち込んでいます。先進国では同様の傾向が見られます。

それでもたばこ会社は成長を続けています。たばこ会社は新たなターゲットを見つけています。女性と発展途上国です。特に、発展途上国の若年者への販売には力を入れています。豊富な資金で政治家に取り入り、都合の良い法案を通させ、売上を伸ばしています。途上国で、幼児がタバコを吸っている映像を目にしたこともあると思います。

僕はたばこ会社が悪の組織だとは思いません。利潤を追求する企業であれば当然の活動であろうと思います。ただし、喫煙は文化や個人の好みではなく、企業の「商品」であることを知って欲しいと思います。

上野循環器科・内科医院 上野一弘

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