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聴診器

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月報 「聴診器」2017/12

月報 「聴診器」 2017/12/01

先月の11月21日に前院長上野聖満が逝去しました。昭和59年に当地で上野内科医院を設立し、地域医療に大きく貢献をしてくれました。途中で病に倒れ、私と交代しましたが、偉大な医師であったと思います。多くの患者さんに慕われたことは、父にとって誇りでした。皆様からの生前のご厚情には心から感謝いたします。

今後も、故人の志を受け継げるように努力をしてまいります。

 

24 心不全⑥  心不全の治療 運動習慣

前回は心不全と生活習慣、特に食事について説明しました。最近は食事とともに運動の重要性も指摘されています。心不全になれば労作で息が上がりやすくなるので、活動性が下がってきます。息切れや倦怠感などの自覚症状がなくても、無意識に活動を抑制してしまう人も多くいます。日常の活動性が低下すると、筋力が低下しさらに不活発化に拍車がかかります。

以前は心不全の治療の基本は安静でした。確かに、今でも急性心不全の治療では安静にしてもらいます。しかし、安静を慢性期でもそのまま続けていると、どんどん不活発化が進行してしまいます。生活が不活発になると、代謝が悪化し、耐糖能異常、脂質異常症が悪化します。肥満が進行し、血圧が上がります。このため、動脈硬化の進行が進んでしまいます。また、骨も弱くなり、骨折もしやすくなります。自律神経が衰え、血圧や脈拍の調節が悪化します。免疫や精神的にも悪い影響が出てきます。認知症の発生リスクも高まります。最悪の場合は寝たきりになってしまいます。このため、最近では過度の安静が心不全患者の寿命を短くすることがわかっています。

ただし、やみくもに運動をすればよいわけではありません。過労は心不全増悪の主要な原因です。心臓に無理な負担をかけない程度の運動を徐々に行っていくのが大切です。では、心臓に負担をかけない運動とはどの程度なのでしょうか?これは有酸素運動が良いと考えられています。運動を行い筋肉を動かすとエネルギーを消費します。エネルギーを産み出す反応には、糖分と酸素が反応してエネルギーを産み出す好気性代謝と、糖分が酸素と反応せずに分解されてエネルギーを産み出す嫌気性代謝があります。動物では運動強度が弱い時は好気性代謝を行い、運動強度を上げていくと一部の筋肉で嫌気性代謝が起きるといわれています。好気性代謝がほとんどを占める段階の運動が有酸素運動と呼ばれ、心臓に負担をかけない運動と考えられています。

心不全患者さんに有酸素運動をしてもらうと、心不全の悪化が減り、寿命が延びることがわかってきました。現在では多くの国のガイドラインで、心不全の運動療法は必須の治療とされています。できれば、安全な環境で適切な環境での運動を勧めています。

どうして運動療法が心不全患者さんにとってそれほど良いのかは、まだよくわかっていません。実は運動療法を行っていても、心臓の収縮機能はそれほど改善しません。今のところは筋力の増強、呼吸機能の改善、血管内皮機能の改善などが要因であろうといわれています。僕は、自律神経調節機能の改善が大きいのではないかと思っています。心不全とは心機能の低下だけではなく、全身の循環調節機能の破綻ととらえることもできます。生理学の教科書では、全身の血流確保のためには、心臓の収縮だけでなく、血管機能や組織での血流分布調節機能が重要と示されています。運動を続けることで心拍応答がよくなったり、換気血流比が改善するのはその証左ではないかと思います。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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