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聴診器

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月報「聴診器」5月号発行しました!

月報 「聴診器」 2019/05/01

これを書いているのは平成31年4月30日、「平成最後の日」です。皆様にとって平成の30年はどんな時代だったのでしょうか。医療の分野ではいくつかの進歩がありました。カテーテルによる血管内治療、外科領域における内視鏡治療などの革新的手技が進み一般化しました。分子生物学の知見の応用が実を結び、新規抗がん剤やバイオシミラー製剤が広く使われるようになりました。社会的には介護保険の創出があげられます。当初は様々な問題がありましたが、今ではなくてはならない制度です。完ぺきではないかもしれませんが、グランドデザインとしては間違っていなかったと思います。総じていえば確実な前進が得られた30年だったと思います。

今月から令和が始まります。

 

26 循環器トピックス⑥ 再生医療の続き

前回の続きです。機械的な刺激やサイトカインを利用する以外に、心筋細胞そのものを再生しようというアプローチもあります。これには幹細胞を利用します。

細胞は分裂することで増えていきます。しかし、ただ増えるだけでは臓器ができたり、生物としての個体になったりはしません。目は目の機能に特化した細胞があり、心臓には心臓に特化した細胞があります。細胞が機能に特化して進化することを分化と言います。受精卵は分裂増殖を繰り返しながら分化を勧めていきます。逆に言えば、受精卵はあらゆる臓器の細胞になるポテンシャルを持っています。しかし、成人の細胞では分化が進んでいるためほかの臓器の細胞にはなれません。分化はいきなり最終的な形態の細胞になるわけでは無く、大きなグループから徐々に細かいグループに別れていきます。それぞれの段階でいろいろな細胞になれるポテンシャルを持つ細胞が幹細胞と呼ばれます。胚性幹細胞から間葉系幹細胞を経て心筋細胞や血管構成細胞になります。

ではどうやって幹細胞を手に入れることができるでしょうか?これにはいくつかの方法があります。一つは受精卵を利用する方法です。受精卵が胚盤胞になった状態で取り出し、特殊な方法で培養して増やしてバラバラにします。この細胞はあらゆる細胞になる可能性を持つ、かつ無限に増殖が可能です。これを胚性幹細胞(ES細胞)と呼びます。ES細胞に様々な刺激を加えると目的とする細胞や組織を作ることが可能です。実際に動物実験では様々な成果を上げています。しかし、ヒトES細胞の利用は、倫理的側面から中止されています。受精卵をES細胞にしなければ胎児となりヒトになる可能性があるからです。

山中伸弥教授の発明したiPS細胞は人工的作られた幹細胞です。皮膚の細胞に特殊な遺伝子を導入して、分化が進んだ細胞を胚細胞のような状態に戻す技術です。人工的に細胞を若返りさせるわけですから世界中がびっくりしました。iPS細胞を利用すれば、倫理的な問題もなくなり再生医療が進むと期待されています。大阪大学ではiPS細胞を心筋細胞に分化誘導し、シート状にして利用する方法を開発中です。治験では7例に心筋シートを使用し、心機能の悪化が防げたそうです。ただし、十分な症例数が確保できず、だれもが納得する結果は出せてないようです。

ほかにも体の中のごく少数の間葉系幹細胞を利用する方法もあります。これを回収して培養して心臓に打ち込めば心筋細胞になってくれるかも知れません。国立循環器病センターなどでは、この方法が実験的に行われているそうです。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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