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聴診器

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月報「聴診器」8月号を発行しました!

月報 「聴診器」 2019/08/01

6月はあまり雨が降らず「から梅雨」と思っていました。一時はダムの貯水率も10%台になっていたようです。しかし、一転して7月は雨が多かったですね。雨が降らずとも曇天が続き、うっとうしい気分になった方も多かったのではないでしょうか。気温は昨年よりずいぶん低かったように思えます。

やっと梅雨が明けましたが、急に暑くなりそうです。熱中症には充分注意してください。

 

26 循環器トピックス⑨ 心アミロイドーシス

アミロイドーシスという病気があります。あまり聞きなれない病名と思いますが、意外に多いことが知られています。アミロイドという小さなタンパクの塊がいろいろな臓器に沈着して、障害を起こす病気です。神経にたまれば、神経が傷害してしびれや麻痺を起こします。腸管にたまれば消化機能や蠕動運動が低下し、下痢や便秘を起こします。心臓にたまることもあります。心筋にアミロイドが沈着すると、心臓の筋肉が厚くなり固くなってきます。すると、一見心臓の動きはいいのに心不全を起こして、心臓や肺が浮腫んだりします。心臓では、心筋内を電気が伝わって心拍を調節していますが、アミロイドーシスになると電気をうまく伝えられなくなります。すると、心房細動や房室ブロックといった不整脈が出現してきます。

アミロイドーシスは原因によって分類されています。多発性骨髄腫という血液のがんの一種では骨髄が異常タンパクを多量に作り、それがアミロイドとして沈着することがあります。関節リウマチなどの慢性炎症疾患では、炎症によって作り出されたタンパクの残骸がアミロイドとして沈着します。遺伝的に異常タンパクを作り、アミロイドーシスを発症する家系もあります。昔は家族性ポリアミロイドニューロパチーと呼ばれていましたが、いまは遺伝性ATTRアミロイドーシスと呼ばれます。熊本県と長野県に多く、この地域ではアミロイドーシスの研究が進んでいます。高齢になれば遺伝子異常がなくともATTRアミロイドが沈着することがあり、老人性ATTRアミロイドーシスと呼ばれます。

アミロイドが心臓に沈着した心アミロイドーシスでは心不全を起こしますが、治療がむつかしいと言われています。心筋梗塞など、左室収縮が低下した心不全にたいする治療はこの20年で急速に進歩しました。一方、左室収縮が保たれ、拡張能障害による心不全の治療は足踏みが続いています。さらにアミロイドーシスは進行性の疾患なので、心不全も徐々にコントロール困難になっていきます。現状では利尿剤の調節や不整脈の治療が主になっています。

高齢者の難治性心不全の何割かは、老人性ATTRアミロイドーシスによるもではないかと考えられていますが、有効な治療法がない中では積極的にアミロイドーシスを診断しようとするモチベーションは低いように思われます。しかし去年、タファミディスが有効であったとの論文が、New England Journal of Medicineに掲載されました。タファミディスは遺伝性ATTRアミロイドーシスに対する薬ですが、老人性ATTRアミロイドーシスに有効であったとの報告でした。論文の内容にはまだ検証が必要で、タファミディス自体も限られた病院でしか使用できません。しかし、心エコーやMRIでアミロイドーシスを早期に診断する方法も提唱されだしており、徐々に治療への期待が高まってきています。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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