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  • 月報 「聴診器」 2009/06

    月報 「聴診器」 2009/06/01

     

    新型インフルエンザ騒動は少しずつ落ち着いてきているようですね。宗像でも保健所を中心とした取り組みを行っています。6月5日は発熱外来の当番なので早めに、閉めさせてもらいます。ご面倒をおかけしますが、ご理解をお願いします。

     

    10 脂質異常症⑥  薬物療法

    今回は、脂質異常症の薬物療法について説明します。

    1. スタチン系スタチンには皮疹や肝障害といった一般的な副作用以外に「横紋筋融解症」という特有の副作用があります。手足の筋肉が壊れて、全身がだるいような痛みが出てきます。重症の場合には尿が赤黒くなります。採血検査ではCPKという筋肉に含まれる酵素が異常に高くなります。発生率は1000人に一人程度とかなり低いのですが、重篤な副作用なので定期的に採血検査をして早期発見に努めています。
    2. なお、世界初のスタチンは日本人の遠藤先生が開発しています。医学の進歩に著しい功績があり、毎年のようにノーベル賞の候補になっています。
    3.  高コレステロール血症に対して使用する薬です。クレストール、リピトール、メバロチンなどがスタチン系の薬です。スタチンは肝臓でのコレステロールの合成を邪魔する薬です。悪玉のLDLコレステロールを減らし、善玉のHDLコレステロールを増やす働きがあります。高コレステロール血症の人にスタチンを投与すると、心筋梗塞の発症を半分程度に抑えられます。また、心筋梗塞を起こした人にスタチンを投与すると寿命を延ばすことが分かっています。
    4. フィブラート系副作用はやはり「横紋筋融解症」が特徴的です。特に、スタチンと併用すると横紋筋融解症が発生しやすくなります。
    5. 中性脂肪を下げる薬です。ベザトールやリピディルがこれにあたります。中性脂肪を下げると同時にHDLコレステロールを増やします。動脈硬化の進行を遅らせる働きがあり、スタチンと同じように予後を改善します。
    6. エゼチマイブ、コレスチラミン重篤なものではありませんが、便秘や吐き気といった消化器症状の副作用が多いのが特徴です。 上野循環器科・内科医院  上野一弘
    7. コレステロールを下げる薬です。肝臓はコレステロールを合成しますが、一部のコレステロールは胆汁から十二指腸に分泌され、さらに肝臓に再吸収されます。エゼチマイブやコレスチラミンは腸管で働いてコレステロールの再吸収を抑制します。効果は弱めで、スタチンほどコレステロールは下がりません。予後の改善効果も十分には検討されていません。スタチンで副作用が出た場合や、効果が不十分な場合に使用されます。
  • 月報 「聴診器」 2009/05

    月報 「聴診器」 2009/05/01

     

    春になっても寒い日が多いですね。しかし、毎年連休明けから一気に暑くなるようです。WBC、日本代表チームが優勝できてよかったですね。テレビに釘付けだった人も多いのではないでしょうか。特に原監督の采配はすばらしかったですね。我慢と信頼はどの分野でも大切だな、と感じました。

     

    10 脂質異常症⑤  治療

    今回は、脂質異常症の治療について説明します。脂質異常症の治療の基本は食事療法と運動療法です。脂質異常症は糖尿病と同じく、文明の発達とともに急増した病気です。前回は、脂質異常による動脈硬化を説明しました。今回は脂質異常症の検査を説明します。脂質異常症の検査は、血液検査と動脈硬化の検査に分けられます。血液検査では中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールを測定します。また、糖尿病の有無は治療目標値に影響を与えますので血糖値やHbA1cも測定します。二次性高コレステロール血症のチェックも必要です。代表的なものは甲状腺機能低下症なので、甲状腺機能を測定します。ネフローゼ症候群という腎臓の病気でもコレステロールが上がります。このため、検尿をして蛋白尿のチェックをすることもあります。

    脂質異常症の問題は、つまるところ、動脈硬化の問題です。脂質異常症といわれた場合に、大切なのは今の動脈硬化の程度を把握することです。当院では脈波測定と頚動脈エコーを利用して、動脈硬化の検査を行っています。動脈硬化が進めば、動脈は硬くなり、内腔が狭くなります。脈波測定は手足の血圧を同時に測定し、動脈の硬さと詰まり具合を調べる検査です。手足の血圧と同時に心臓の音も調べ大動脈弁が閉まる音が手足の血管にどれぐらいの速さで伝わるかを調べます。動脈が硬ければ音は早く伝わるし、柔らかければゆっくり伝わります。当院の機械では動脈の硬さはCAVIという指標で表されますが、CAVIが9以上で「硬い」と判断されます。血管の硬さは年齢に比例しますので血管年齢も分かります。この検査では手足の血圧を同時に測定します。動脈硬化が進行して、手や足の動脈が狭くなっていれば、狭くなった部位の血圧が下がります。手足の血圧を同時に測定することで、手足の動脈の狭窄がチェックできます。

    当院では頚動脈エコー検査も取り入れています。動脈硬化が進めば動脈の壁が厚くなっていきます。エコー検査では首の動脈を観察して、壁の厚さを測定します。正常では動脈の壁は0.8mm程度ですが、動脈硬化が進行すれば厚くなってきます。患者さんによっては、一部だけボッコリ肥厚しています。このボッコリをプラークと呼びますが、エコーではプラークの形や大きさ、破れやすさなどを調べます。中には血管が詰まりそうになっている方もいて、びっくりすることもあります。

    症例によっては、運動負荷心電図をする場合もあります。狭心症のチェックのためです。心臓の血管・冠動脈に動脈硬化が進めば狭心症を引き起こします。狭心症は普通に心電図をとっても分からないことが多い病気です。運動をすると心臓の必要血流が増大しますが、狭窄があれば血流が不足するので心電図に変化が出てきます。

    これらの検査は体に負担をかけずに出来る検査です。経過観察のために、採血と同じように繰り返しできるところが便利ですね。

    10 脂質異常症⑤  治療

    今回は、脂質異常症の治療について説明します。脂質異常症の治療の基本は食事療法と運動療法です。教科書的には卵や動物性脂肪などを減らし、毎日1万歩以上歩くことが勧められています。脂質異常症は、糖尿病と同じく文明の発達とともに急増した病気です。理屈の上では、100年前の社会のような生活をすれば脂質異常症の大部分は治癒するはずです。しかし、身近に食べ物があふれ、便利な交通手段がある現代社会で文明の恩恵を拒否し続けるのは、大変困難だと思います。

    糖尿病の治療では「食事療法に勝る治療なし」と言われますが、脂質異常症については薬物療法でも長期予後の改善が十分得られます。脂質異常症の治療に関する研究は数多く行われてきていますが、脂質異常症を持つ人は5年間で40%の人が心筋梗塞や狭心症を発症することがわかっています。薬物療法を行えばこの確率を10%程度に抑えられます。また、最近では糖尿病や高血圧など、他の動脈硬化促進因子がある場合にはより厳格に治療をすることで、さらに予後が改善することがわかっています。

    薬物療法によって心筋梗塞などの病気が減ることはわかりましたが、薬物療法自身の弊害は無いのでしょうか。薬物療法の弊害は①薬自身の副作用、②コレステロールを減らすことによる弊害の二つが考えられます。薬の副作用は、薬の種類にもよりますが、重篤なものは1000人に一人程度発生します。残念ながらゼロではありません。しかし、薬物を飲まない場合に起こる疾病の可能性に比べれば非常に少ない確率です。どの患者さんに副作用が起こり、どの患者さんに病気が起こるかわからない段階では、薬物療法を選択したほうが安全といえます。

    昔はコレステロールを減らしすぎると、癌が増えるとか、脳出血が増えるとかが心配されていました。実際、統計では癌や脳出血の患者さんのコレステロールが低いことがわかっています。ところが、薬物療法でコレステロールを減らした患者さんを長年観察しても、癌や脳出血が増えないことがわかってきました。これは、原因と結果を混同させたことによる思い込みが原因でした。癌により栄養不足になり、結果としてコレステロールが減ることはよくあります。この場合、低コレステロール血症は癌の原因ではなく、結果だったのです。

    薬物療法を薦める際に、「薬を飲みはじめたら、すっと飲み続けなくてはいけないんでしょう?」と聞かれることがよくあります。これは、半分正しく半分間違えです。薬を飲んでコレステロールが下がっても、内服をやめると再び高値になります。ただし、投薬前の値に戻るだけで投薬前よりも上がるわけではありません。もとに戻るだけです。また、短い期間でも脂質代謝を正常化しておくほうが、血管が痛まず臓器障害も進みません。簡単にいえば、副作用が起きない限り、薬を長く飲めば飲むだけ寿命が延びるのです。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/04

    月報 「聴診器」 2009/04/01

     

    WBC、日本代表チームが優勝できてよかったですね。テレビに釘付けだった人も多いのではないでしょうか。特に原監督の采配はすばらしかったですね。我慢と信頼はどの分野でも大切だな、と感じました。

     

    10 脂質異常症④  検査

    前回は、脂質異常による動脈硬化を説明しました。今回は脂質異常症の検査を説明します。脂質異常症の検査は、血液検査と動脈硬化の検査に分けられます。血液検査では中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールを測定します。また、糖尿病の有無は治療目標値に影響を与えますので血糖値やHbA1cも測定します。二次性高コレステロール血症のチェックも必要です。代表的なものは甲状腺機能低下症なので、甲状腺機能を測定します。ネフローゼ症候群という腎臓の病気でもコレステロールが上がります。このため、検尿をして蛋白尿のチェックをすることもあります。

    脂質異常症の問題は、つまるところ、動脈硬化の問題です。脂質異常症といわれた場合に、大切なのは今の動脈硬化の程度を把握することです。当院では脈波測定と頚動脈エコーを利用して、動脈硬化の検査を行っています。動脈硬化が進めば、動脈は硬くなり、内腔が狭くなります。脈波測定は手足の血圧を同時に測定し、動脈の硬さと詰まり具合を調べる検査です。手足の血圧と同時に心臓の音も調べ大動脈弁が閉まる音が手足の血管にどれぐらいの速さで伝わるかを調べます。動脈が硬ければ音は早く伝わるし、柔らかければゆっくり伝わります。当院の機械では動脈の硬さはCAVIという指標で表されますが、CAVIが9以上で「硬い」と判断されます。血管の硬さは年齢に比例しますので血管年齢も分かります。この検査では手足の血圧を同時に測定します。動脈硬化が進行して、手や足の動脈が狭くなっていれば、狭くなった部位の血圧が下がります。手足の血圧を同時に測定することで、手足の動脈の狭窄がチェックできます。

    当院では頚動脈エコー検査も取り入れています。動脈硬化が進めば動脈の壁が厚くなっていきます。エコー検査では首の動脈を観察して、壁の厚さを測定します。正常では動脈の壁は0.8mm程度ですが、動脈硬化が進行すれば厚くなってきます。患者さんによっては、一部だけボッコリ肥厚しています。このボッコリをプラークと呼びますが、エコーではプラークの形や大きさ、破れやすさなどを調べます。中には血管が詰まりそうになっている方もいて、びっくりすることもあります。

    症例によっては、運動負荷心電図をする場合もあります。狭心症のチェックのためです。心臓の血管・冠動脈に動脈硬化が進めば狭心症を引き起こします。狭心症は普通に心電図をとっても分からないことが多い病気です。運動をすると心臓の必要血流が増大しますが、狭窄があれば血流が不足するので心電図に変化が出てきます。

    これらの検査は体に負担をかけずに出来る検査です。経過観察のために、採血と同じように繰り返しできるところが便利ですね。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/03

    月報 「聴診器」 2009/03/01

     

    ようやく、寒さも緩んできましたね。インフルエンザなどの感染症も減ってきています。しかし、去年と一昨年は、3月からまた寒くなりました。一度、緩んだ後の寒さは格別に体にこたえます。用心しましょうね。

     

    10 脂質異常症③  動脈硬化-2

    前回は、脂質異常による動脈硬化の進行を説明しました。動脈硬化は、年とともに進行し、LDLコレステロールが高値であればさらに進行が早まります。しかし、LDLコレステロール値が一緒でも、全員が同じように動脈硬化が進むわけではありません。動脈硬化を進めるのは、脂質異常症以外に糖尿病、高血圧、喫煙、遺伝的要因があります。このため、同じLDLコレステロール値でも、糖尿病があるほうが動脈硬化が進みますし、高血圧があればさらに進みます。逆に言えば、糖尿病や高血圧があればより厳格に脂質管理をしなければ動脈硬化がかなりのスピードで進みます。これらの動脈硬化の促進因子を、「危険因子:risk factor

    」と呼びます。

    脂質異常症のガイドラインでは、治療の目標値が決められています。一般的にはLDLコレステロール160mg/dl以下、中性脂肪 150mg/dl以下、HDLコレステロール 40mg/dl以上が目標値になります。しかし、①高血圧、②糖尿病、③加齢、④冠動脈疾患の家族歴、⑤喫煙などの危険因子うち一つでもあればLDLコレステロールの目標値は140mg/dl以下になり、三つ以上あればLDLコレステロールの目標値は120mg以下になります。特に糖尿病は、特別に2ポイント分の危険因子として考えますので、加齢と糖尿病があるだけでLDLコレステロールの目標値は120mg/dlになります。また、すでに動脈硬化が進み心筋梗塞や狭心症を発症してしまっている人はさらに厳しく考え、LDLコレステロール100mg/dl以下が目標になります。

    これらの目標値はなんとなく決められたものではありません。コレステロール治療の様々な研究結果を参考に決められたものです。もともと、コレステロールが高いと心筋梗塞が多いのは分かっていました。しかし、コレステロールを下げたら本当に心筋梗塞の発生が減り、寿命が長くなるかどうかは分かりませんでした。一部では「コレステロールを下げると癌が増えるのではないか」などの心配をする医師もいたのです。そこで、数万人規模でコレステロールを下げた人と下げない人の経過を比べてみる研究が行われました。すると、コレステロールを下げた人のほうで、心筋梗塞や脳梗塞の発生が圧倒的に減りました。一方、癌を含めた他の病気の発症に差は無く、結果としてコレステロールの治療により寿命が延びることが確認されました。同じように、様々な危険因子をもつ患者さんに対して、いろいろな目標値を設定して研究をした結果も分かってきました。いまでは、危険因子が多い場合は、目標値をより下げたほうが寿命は延びることが分かっています。これは単に長生きをするだけでなく、入院や手術を受けなくていい、いわゆる健康寿命が延びることも確認されています。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/02

    月報 「聴診器」 2009/02/01

     

    インフルエンザが流行しています。最近はタミフルが効かないタイプも出現しているようです。ただし、インフルエンザそのものはあまり危険な病気ではありません。もともと、元気な人であれば、タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬を使用しなくても3-4日寝ておけば治ります。抗インフルエンザ薬を使用すると1-2日早く治ります。いずれにしても、しっかり寝ることが一番の薬です。

    もっとも、高齢の方や心臓や肺が悪い患者さんがインフルエンザになった場合には危険が高くなります。この場合には、抗インフルエンザ薬を使用したほうがよいと思います。

     

    10 脂質異常症②  動脈硬化-1

    前回から脂質異常症について説明しています。脂質異常症とはLDLコレステロールが増えたり、中性脂肪が増えたりする病気です。脂質異常症だけでは、症状は何もありません。よく、「コレステロールが高くなると、血液がドロドロになって頭が重くなる。肩こりがする。」といいますが、そんなことはありません。これは、健康食品屋さんが作った宣伝文句です。脂質異常症では全身の血管に動脈硬化が進みます。動脈硬化が進めば狭心症や脳梗塞を起こし、この時点で初めて症状が出ます。ただし、この時点で脂質異常症の治療を開始しても動脈硬化自体が改善することはありません。

    肝臓から血液に放出されたコレステロールは、LDLコレステロールの形で末梢の血管まで届けられます。そこで臓器に取り込まれホルモンや細胞構造の部品になります。血管に届けられるLDLコレステロールが多すぎると、LDLコレステロールは血管壁にもぐりこみます。血管は水道管のような構造をしていますが、その壁は内側から内皮、平滑筋、外膜の三層で構成されています。LDLコレステロールはこの内皮に取り込まれます。ここで、マクロファージという白血球の仲間がやってきます。マクロファージはLDLコレステロールをどんどん食べます。LDLコレステロールをたっぷり食べてパンパンに太ったマクロファージはそのまま、血管内皮で死にます。すると、血管内皮の中にコレステロールの塊が出来ることになります。これを繰り返していくと、血管壁に柔らかいぶつぶつが出来るようになります。このぶつぶつはお粥の粒のようにみえるので「粥状動脈硬化」と呼ばれます。このぶつぶつは時間とともに大きくなっていきます。大きくなったぶつぶつを、僕たちは「プラーク」と呼んでいます。プラークが血管の大半を占めるようになると、血流が悪くなります。例えば、心臓の栄養血管(冠動脈)で動脈硬化が進行し血管が狭くなると、狭心症を発症します。

    プラークの中は脂が詰まっています。急な血圧の上昇などの血管にストレスがかかると、このプラークが破けます。プラークが破けると、脂と血液が直接触れ血液の塊が出来ます。血液は、血管以外のもの触れると固まる性質があるのです。この血液の塊を血栓と呼びます。血栓が血管を閉塞すると、そこから先に血液が行かなくなります。これが、心臓に起これば心筋梗塞であり、脳に起これば脳梗塞になります。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/01

    月報 「聴診器」 2009/01/01

     

    明けましておめでとうございます。毎年、お正月を過ぎると、体重が増加したり血圧が上がったりする人が多くなります。お餅やご馳走の食べすぎですね。僕もよく食べました。お互いに節制を心がけましょうね。

     

    10 脂質異常症①  脂質代謝

    今回からは脂質異常症について説明していきます。脂質異常症とは聞きなれない名前だと思いますが、もともとは「高脂血症」と呼ばれていました。平成19年の動脈硬化疾患予防ガイドラインから脂質異常症と呼ばれるようになっています。まぁ、「コレステロールが高い」とか「中性脂肪が高い」とかいうやつですね。脂質異常症には高LDLコレステロール血症、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症が含まれます。

    コレステロールや中性脂肪は食事から摂取されますが、体内でも合成されます。体内での合成は主に肝臓で行われます。合成された、もしくは食事から吸収された中性脂肪やコレステロールは血液を介して全身に運ばれます。もともとコレステロールは体にとって大切なもので、細胞の構造部品になったり、ホルモンの原料になったりします。中性脂肪はエネルギー源として活用されます。ただし、コレステロールや中性脂肪が多すぎると動脈硬化が進み様々な病気を引き起こします。

    健康診断などでは総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪などを測定します。ここで出てくる、HDLやLDLは、高密度リポ蛋白(high Density Lipoprotein: HDL)と低密度リポ蛋白(Low Density Lipoprotein: LDL)の略です。コレステロールや中性脂肪は、つまるところ脂ですので水や血液には溶けません。そこで、リポ蛋白を乗り物として輸送されています。この、リポ蛋白に何種類かあってそれぞれに役目があり、その中の一つカイロミクロンは腸管で吸収された中性脂肪を肝臓まで運ぶ役目をしています。LDL は肝臓で合成されたコレステロールを末梢に運ぶ役目をしています。このため、血管にコレステロールをためこみ、動脈硬化を促進させる原因となります。LDLがコレステロールと合体した状態をLDLコレステロールと表現し、LDLの役目をふまえて「悪玉コレステロール」と俗に呼んでいるのです。逆にHDLは末梢から肝臓までコレステロールを運ぶ役目をしています。このため、血管からコレステロールを引き上げ、動脈硬化にたいして抑制的に働きます。HDLがコレステロールと合体した状態をHDLコレステロールと表現し、リポ蛋白の役目を考えて「善玉コレステロール」と呼ばれます。コレステロール自体はHDLコレステロールもLDLコレステロールも同じもので、コレステロールそのものに悪玉や善玉の区別はありません。総コレステロールは、コレステロールの総量です。総コレステロールの中にはHDLコレステロール、LDLコレステロールが含まれ、中性脂肪の値も影響します。最近は総コレステロール値は重視されず参考程度です。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2008/12

    月報 「聴診器」 2008/12/1

     

    最近はインフルエンザの予防接種などで患者さんが大変多くなっています。待ち時間が長くなり、皆様には大変ご迷惑をおかけしています。基本的には番号順に診察を行っていますが、重症が疑われる場合は早めに診察をするようにしています。症状が重い方はスタッフに申し出てください。

     

    9 糖尿病⑦ 糖尿治療薬 インスリン

    皆さんは11月14日が何の日かご存知でしょうか。国連と世界糖尿病連合が制定した「世界糖尿病デー」です。イメージカラーのブルーに合わせて、世界各地でブルーのライトアップが行われることが有名です。日本でも東京タワーや鎌倉大仏などが青く染められました。11月14日はインスリン発見者のフレデリック・バンディング氏の誕生日から決められました。バンディングは膵臓からインスリンを抽出し、糖尿病の治療に使用しました。それまで、糖尿病は不治の病でしたが、インスリンの使用により飛躍的に寿命が延びました。この功績によりバンディングは1923年のノーベル賞を受賞しています。今日では様々な糖尿病治療薬が登場していますが、それでもインスリンは最も大事な薬です。

    治療に使用するインスリンはいくつか種類があります。作用時間で分類すると、超速攻型、速攻型、中間型、持続型などがあります。また、速攻型と中間型を混ぜた混合型インスリンもあります。超速攻型では皮下注射後15分で効き始め、一時間前後でピークを迎えます。速攻型では2時間前後がピークになり、中間型では6時間前後がピークになります。混合型では2時間前後と6時間前後にピークがあります。持続型では1時間後ぐらいから効き始めますが、ピークは作らず24時間程度作用が持続します。

    いつの時点の血糖値を下げたいかでインスリンの種類や打つタイミングを決めます。一番生理的条件に近く、厳格な血糖コントロールが得られるのが四回打ち法です。一日一回、持続型のインスリンを投与し、毎食前に速攻型もしくは超速攻型のインスリンを打つ方法です。食事の時間がずれても対応できますし、低血糖発作が比較的少ない方法です。ただし、一日に4回もインスリンを打つのは手間がかかり、患者さんの負担は大きくなります。混合型インスリンを使って一日2回打つ方法もあります。混合型インスリンはピークが二つあるので、朝一回投与しても、昼食時にもう一回ピークがくるようになります。入院中のように定期的に決まった量の食事を取れる場合はよい方法だと思います。ただし、食事が不規則になると低血糖発作を起こしやすくなるので、あまり厳格な血糖コントロールは得られなくなります。

    持続型インスリンは内服薬との併用でも使用されます。内服の血糖降下薬で十分なコントロールが得られない時に、一日一回持続型インスリンを打つと劇的に改善されることがあります。この方法はBOT(Basal supported Oral Therapy)と呼ばれ、外来でもインスリンの導入が可能です。欧米のガイドラインではこの方法が奨励されています。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2008/11

    月報 「聴診器」 2008/11/01

     

    最近は風邪の人も増えてきました。帰ったあとは手洗いとうがいをしてください。

     

    9 糖尿病⑥ 糖尿治療薬 内服薬

    前回は糖尿病の治療薬について、大まかに説明しました。大切なのは、薬物療法を始めても食事療法は続けなければならないことです。これは、しっかり覚えておいてください。今回は、それぞれの薬ついて説明していきます。

    1. SU薬 スルフォニル・ウレアーゼの略です。膵臓を刺激してインスリンを分泌させて血糖値を下げる薬です。一番多く使用されている経口血糖降下薬です。ダオニールやアマリールなどがこれに当たります。長所は血糖を下げる効果が強いこと、比較的安価なことです。一方、短所としては、低血糖発作が多い、食欲が出る、太るなどがあります。僕の考えとしては、非常に有用な薬ではありますが、長期予後を考えて、必要最小限の使用にしたいと思っています。
    2. グリニド SU薬と同じように膵臓を刺激してインスリンを出させる薬です。ただし、SU薬と比べて作用時間が非常に短く、内服して30分-60分程度しか効きません。この薬は、食事前に服用し、食後の血糖値を抑える効果があります。グルファストやスターシスなどがこれにあたります。食後高血糖タイプの糖尿病の治療に優れており、低血糖も比較的少ない印象です。作用時間が短いので空腹感や肥満も出にくくなっています。短所としては、毎食前に内服しなければならないので面倒くさいことです。また、重傷の糖尿病にはあまり効果がありません。
    3. α-GI 腸管に作用し、糖の吸収を抑える薬です。ベイスンやグルコバイがこれに当たります。食後の血糖上昇を穏やかにする効果があります。長所は低血糖発作がないことです。膵臓に負担をかけないことを考えても、非常に理屈にあった薬です。ただし、やはり毎食前に内服しなければならないこと、お腹が張ったりガスが多くなることがあります。血糖降下作用は弱く、軽症に使用するか、補助薬として使用します。
    4. メトフォルミン 肝臓でのグリコーゲンからブドウ糖を作るのを抑える薬です。また、筋肉に作用してインスリンの効きをよくする働きもあります。血糖降下作用はそれほど強力ではありませんが、肥満気味の方にはよく効きます。低血糖発作も少なく長期予後を改善する効果もあります。以前、類似薬で副作用が多く出たことがあり、高齢者、肝障害、腎機能低下があると使ってはいけないとのルールがあります。非常によい薬なのにルールが厳しすぎて使用できないのがつらいところです。
    5. ピオグリタゾン 一番新しい薬です。筋肉に作用してインスリンの効果を増強します。低血糖が少なく、長期予後も改善するとの研究結果も出てきました。血糖降下作用は穏やかで、むくみなどの副作用があります。 上野循環器科・内科医院  上野一弘
  • 月報 「聴診器」 2008/10

    月報 「聴診器」 2008/10/1

     

    あっと言う間に涼しくなりましたね。この時期、風邪や肺炎の人が急激に増えてきます。朝方は思ったよりも冷えるようですので、寝るときは少し多めに着込んでください。

     

    9 糖尿病⑤ 糖尿病の治療

    前回は糖尿病の食事療法について龍官さんから説明してもらいました。食事療法は、糖尿病治療の基本であり、軽症から重症までどの段階の治療においても大切なものです。今回は、内服薬について説明しますが、糖尿病体質そのものを変えるのは食事療法だけです。食事療法をせずに、薬物療法だけを行うと、血糖値は一時的には下がるものの、一年もすれば再度悪化していきます。血糖コントロールを薬だけに頼れば、薬の必要量はどんどん増えてゆきますし、合併症も多くなります。「糖尿病だけど薬を飲んでいるから、甘いものを食べても大丈夫」といわれる方がいますが、そんなことをしていれば確実に合併症が進みます。また、薬物療法で血糖コントロールが改善したり、低血糖症状が出たりすると、食事量を増やす方もいます。このときは薬物の量を減らすべきで、食事療法は継続しなければなりません。

    薬物療法の前に、体内で糖がどんな風に処理されているかをおさらいしておきましょう。糖は口から食物の形で摂取されます。食物は消化管内で細かい分子に分解され、グルコースの形で小腸から吸収されます。吸収された糖は門脈という特別な血管を通って肝臓に運ばれます。ここで、糖の一部はグリコーゲンの形で肝臓に蓄えられます。一部の糖はそのまま、血中に移行します。血中の糖は、インスリンの働きで細胞に取り込まれます。インスリンは膵臓という肝臓と胃のそばにある臓器から放出されます。インスリンは常時微量に放出されていますが、食後は多量に放出され、血糖値を低下させます。糖尿病の薬は、糖の代謝のそれぞれのレベルに作用して、血糖値を抑えます。

    糖尿病の薬は、内服薬とインスリン(皮下注射)に分かれます。内服薬は大きく3種類ほどに分かれます。糖の吸収を抑える薬、膵臓を刺激してインスリンを出させる薬、細胞に作用してインスリンの作用をよくする薬などがあります。内服薬沢山使用しても思ったように血糖値が下がらないときや、他の病気で血糖コントロールが不安定なときはインスリンを使用します。なお、I型糖尿病では原則的にインスリンを使用します。

    薬物療法の目的は血糖値の正常化です。ただし、薬を使用することによって低血糖などの副作用が出現することがあります。また、薬を長期に使用することで、膵臓が疲れてしまい薬が効かなくなることもあります。最近では、なるべくインスリンを出させないような薬のほうが予後が良いといわれています。薬物の種類や量は①血糖値の正常化、②副作用、③長期的な効果を考えて選びます。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2008/8

    月報 「聴診器」 2008/8/1

     

    暑いですね。もう、一ヶ月ぐらい雨が降っていない気がします。水不足は大丈夫なんでしょうか。

     

    9 糖尿病④ 糖尿病の治療

    今回からは糖尿病の治療について説明します。ただし、I型糖尿病は原則的にインスリン治療が第一選択なので、II型糖尿病の治療についての説明になります。

    糖尿病治療目標は高血糖の改善です。このために、食事療法、運動療法、薬物療法があり、薬物療法の中に経口薬治療とインスリン治療があります。これらの治療法を組み合わせながら、血糖を正常化していきますが、血糖値正常化には3つの数値目標があります。①空腹時血糖120mg/dl以下、②食後最高血糖値 180mg/dl以下、③HbA1c 6.4%以下となっています。これらの数値目標は、高血糖の先にある合併症の予防を目指して設定されました。糖尿病患者さんの経過を長年観察すると、上記の目標が達成できている人と達成できていない人の間で、合併症の発症率が大きく異なったのです。つまり、数値目標よりも血糖値が高い場合は、失明や人工透析導入、脳梗塞の発症などが多く、寿命も短くなります。

    食事療法はすべての患者さんで基本となる治療です。II型糖尿病は摂取カロリーが消費カロリーを大きく上回るために発症します。まずは、このアンバランスを改善することが大切です。本来必要な摂取カロリーは、その人の身長と活動性から算出します。基本的に体重は無関係です。太った人でも、やせた人でも身長と活動性が一緒ならば、必要なカロリーは同じと考えるのです。

    運動療法は、運動にてカロリー消費を促すものです。しかし、運動だけで多量のカロリーを消費するのは大変です。例えば、100kclを消費するためには30分は 歩かなければいけません。アイスクリーム1カップ、200kcalを食べたら1時間歩かなくては消費できない計算になります。運動療法は、食事療法をしながら行うべきです。よく、「沢山運動したから、好きなだけ食べていいと思った」との話を聞きますが、運動療法が食事療法をしないことの言い訳にはならないことはよくわかっておいてください。ただし、消費カロリーが十分確保できなくても運動療法には意味があります。運動をすることで基礎代謝が上がり心肺機能の向上が得られます。また、インスリン抵抗性を改善することで、インスリンが効きやすい体に変えることができます。運動療法は、一回30分以上、一日2回、週3日以上が望ましいとされています。僕はそこまで出来なくても、「何もしないよりはマシ」と、ちょっとでも良いから体を動かすようにしたほうがよいと思います。

    薬物療法は生活習慣の改善でも治療効果が見られない場合や、緊急処置が必要な場合に行われます。薬物療法は即効性があり、効果も確実です。しかし、低血糖を起こしたり、空腹になったり、肥満になったりします。合併症の予防を考えても食事療法に勝る治療はなく、薬物治療は必要最小限で行うべきだと思います。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

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