月報 「聴診器」 2005/1/4
明けましておめでとうございます。昨年は大きな出来事が多かった年でしたね。今年は、よいことばかり起こる一年でありますように。
3.心筋梗塞② 心筋梗塞の診断
前回は、心筋梗塞の概要を説明しました。心筋梗塞は心臓の栄養血管(冠動脈)が詰まり、心臓の一部が死んでしまう恐ろしい病気です。心筋梗塞は発症してから24時間内に死亡することがおおく、早期に治療をしなければなりません。心筋梗塞では、壊死する心筋が多ければ多いほど死亡率は高くなります。また、梗塞の範囲が大きければ、慢性期にも生活に支障をきたすことが多くなっています。心臓の血管が詰まってしまうと、その血管が血液を送っていた部分は4-8時間かけて死んでいきます。逆にいえば、発症直後に治療を開始すれば壊死をまぬがれる心筋も多いわけです。また、急性期には様々な合併症が出現するため、迅速に診断を行い、専門病院に入院して治療をすることが大切です。
心筋梗塞の多くは「激しい胸の痛み」「胸を強く押される感じ」などの典型的な症状で発症しますが、中には「左腕がしびれる」「奥歯が痛くなる」などのはっきりとしない症状や、ほとんど症状のない場合もあります。心筋梗塞が疑われた場合、まず心電図をとります。心筋梗塞の8割では、典型的な心電図変化を認め、すぐに診断ができます。しかし、あとの2割では、典型的な心電図変化が認められなかったり、変化が非常に小さかったりします。採血検査も行います。心筋梗塞を発症し心臓の筋肉が死んでしまうと、筋肉に含まれている蛋白質が血液中に出てきます。この蛋白質は何種類かありますが、主にCPK(クレチニンホスホキナーゼ)や、トロポニンTなどを測定します。特に、トロポニンTは心筋梗塞を発症して比較的短時間で上昇し、採血してから20分程度で結果が出るため、非常に便利な検査です。胸部レントゲンでは、心不全を合併していないかどうかを見ますが、たまに気胸が見つかる場合もあります、気胸は肺が破けて縮んでしまう病気ですが、心筋梗塞とは直接的な関係はありません。しかし、気胸でも激しい胸の痛みが出現するため鑑別疾患として重要です。心エコーも有用な検査です。心電図や採血検査でも心筋梗塞かどうかはっきりしないときにも、心エコーでわかる場合もあります。心筋梗塞を起こしていれば、心臓の一部が動かなくなっているのが見られます。また、心室瘤や心内血栓のチェックにも役に立ちます。以上の検査で心筋梗塞が強く疑われれば、専門病院で冠動脈造影を行います。これは、手や足から細長い管を入れて、心臓の栄養血管(冠動脈)を撮影する検査です。この検査によって、どの冠動脈のどの部分が詰まっているかがわかり、その後の治療戦略を立てやすくなります。
心筋梗塞の診断はまず「心筋梗塞を疑う」ことです。なにか怪しい症状があれば、すぐに最寄りの医療機関を受診してください。
上野循環器科・内科医院 上野一弘