月報 「聴診器」 2006/12/1
比較的暖かい日が続いていますが、徐々に寒くなってきていますね。冬は確実に近づいているようです。冬は、血圧が高くなったり、糖尿病が悪化したり、心不全や喘息が出てくる時期でもあります。気をつけてください。
7 先天性心疾患④ 動脈管開存症
胎児の循環は、成人とは大きく異なっています。これは、胎児が母親の胎盤から酸素と栄養をもらっているためです。胎児の循環は大まかには胎盤>>臍帯(臍静脈)>>静脈>>右心房>>卵円孔>>左心房>>左心室>>大動脈>>全身となっています。しかし、右心房に入った血液の一部は右心室から肺動脈に流れます。その後さらに二つに分かれ、大部分は動脈管を通って大動脈に合流し、残りは肺に流れ、左心房に還ってきます。動脈管は生後数時間で閉じます。長くても2週間くらいで閉じます。動脈管は血液の酸素が多くなると血管の筋肉が縮んで、内腔が閉じるためです。成人では動脈管は動脈管索として名残をとどめています。
まれに、この動脈管が開いたままになっていることがあります。これが、動脈管開存症です。胎児の時には、肺動脈から大動脈に血液が流れますが、誕生後は大動脈のほうが肺動脈より圧力が高いため、動脈管が開いていると、血液が大動脈から肺動脈に流れます。このため、大きな動脈管開存があると肺の血流が異常に増えて、肺うっ血を起します。また、感染症に弱く、感染性心内膜炎になりやすくなります。
開存が小さい場合には、自然に閉じたり、経過観察でもよい場合があります。しかし、開存が大きく、心不全などを起す場合は外科的治療を行います。手術は、動脈管を外から糸で縛る方法が一般的です。最近はカテーテルでコイルを入れて、動脈管を詰まらせる方法も選択できます。
動脈管開存症自体は比較的予後のよい疾患です。しかし、ほかの様々な先天性心疾患と合併することもあります。他の、先天性心疾患の欠点を動脈管開存が補っている場合もあります。このような場合は、逆に動脈管を閉じないような処置がとられることもあります。
上野循環器科・内科医院 上野一弘