月報 「聴診器」 2008/12/1
最近はインフルエンザの予防接種などで患者さんが大変多くなっています。待ち時間が長くなり、皆様には大変ご迷惑をおかけしています。基本的には番号順に診察を行っていますが、重症が疑われる場合は早めに診察をするようにしています。症状が重い方はスタッフに申し出てください。
9 糖尿病⑦ 糖尿治療薬 インスリン
皆さんは11月14日が何の日かご存知でしょうか。国連と世界糖尿病連合が制定した「世界糖尿病デー」です。イメージカラーのブルーに合わせて、世界各地でブルーのライトアップが行われることが有名です。日本でも東京タワーや鎌倉大仏などが青く染められました。11月14日はインスリン発見者のフレデリック・バンディング氏の誕生日から決められました。バンディングは膵臓からインスリンを抽出し、糖尿病の治療に使用しました。それまで、糖尿病は不治の病でしたが、インスリンの使用により飛躍的に寿命が延びました。この功績によりバンディングは1923年のノーベル賞を受賞しています。今日では様々な糖尿病治療薬が登場していますが、それでもインスリンは最も大事な薬です。
治療に使用するインスリンはいくつか種類があります。作用時間で分類すると、超速攻型、速攻型、中間型、持続型などがあります。また、速攻型と中間型を混ぜた混合型インスリンもあります。超速攻型では皮下注射後15分で効き始め、一時間前後でピークを迎えます。速攻型では2時間前後がピークになり、中間型では6時間前後がピークになります。混合型では2時間前後と6時間前後にピークがあります。持続型では1時間後ぐらいから効き始めますが、ピークは作らず24時間程度作用が持続します。
いつの時点の血糖値を下げたいかでインスリンの種類や打つタイミングを決めます。一番生理的条件に近く、厳格な血糖コントロールが得られるのが四回打ち法です。一日一回、持続型のインスリンを投与し、毎食前に速攻型もしくは超速攻型のインスリンを打つ方法です。食事の時間がずれても対応できますし、低血糖発作が比較的少ない方法です。ただし、一日に4回もインスリンを打つのは手間がかかり、患者さんの負担は大きくなります。混合型インスリンを使って一日2回打つ方法もあります。混合型インスリンはピークが二つあるので、朝一回投与しても、昼食時にもう一回ピークがくるようになります。入院中のように定期的に決まった量の食事を取れる場合はよい方法だと思います。ただし、食事が不規則になると低血糖発作を起こしやすくなるので、あまり厳格な血糖コントロールは得られなくなります。
持続型インスリンは内服薬との併用でも使用されます。内服の血糖降下薬で十分なコントロールが得られない時に、一日一回持続型インスリンを打つと劇的に改善されることがあります。この方法はBOT(Basal supported Oral Therapy)と呼ばれ、外来でもインスリンの導入が可能です。欧米のガイドラインではこの方法が奨励されています。
上野循環器科・内科医院 上野一弘