月報 「聴診器」 2008/ 2/ 1
寒い日が続きますね。そろそろインフルエンザが流行ってきそうですね。年末から引き続き感染性腸炎(俗に言う「嘔吐下痢」)もはやっているようです。お腹の調子が悪いかな?と思ったらお腹に優しい食事をするようにしてください。
8 高血圧⑫ 高血圧の検査
高血圧症の合併症の一つに動脈硬化があります。血管は血液を送る管で、水道管のように全身にくまなく広がっています。血管の壁にコレステロールなどが積もってくると、血管が硬くなったり、もろくなったりします。また、血管の壁が肥厚してきますので血管が詰まったりもします。動脈硬化が心臓の栄養血管(冠動脈)で起これば狭心症や心筋梗塞を起こします。脳の血管に動脈硬化が起これば、脳梗塞や脳血管性認知症を起こします。大動脈に動脈硬化が進むと動脈が腫れたり裂けたりする、大動脈瘤となります。この動脈硬化の進行は一方通行で、動脈硬化が進めば二度と正常な血管には戻りません。ただし、動脈硬化は特定の人に起こるわけではなく、人類すべてに起こります。いわば、血管の老化現象です。年とともに動脈硬化は進みますが、その進むスピードが人によって異なります。30代で血管がボロボロになっている人もいれば、90歳でも比較的若々しい血管を保っている人がいます。動脈硬化を進ませる要因には喫煙、糖尿病、コレステロール、遺伝などがありますが、高血圧も重要な要素の一つです。
動脈硬化の検査としては当院では二つの検査を行っています。一つは脈波測定です。手足の血圧と心電図を同時に測定することで、血管の硬さと血管のつまり具合を見ることが出来ます。血管の硬さはCAVIという指標であらわされます。一般に9以上で「硬い」と表現しますが、年齢との比較が大切です。血管の詰まり具合はABIという指標であらわされます。これは「足の血圧」割る「手の血圧」で求められます。普通は足の血圧のほうが手の血圧より高いので、ABIは1を超えます。しかし、下半身の血管が狭くなると足の血圧が低下し、ABIが下がります。ABIが0.8以下では下半身の血管が狭いと考えます。
もう一つは、頸部血管エコーです。超音波を使って、首の血管を画像で見る検査です。血管そのものを見ながら、血管の壁の厚さを測ります。0.8mm以上あれば、動脈硬化が進んでいると考えます。時々、血管の壁が小さな山のように盛り上がっていることもあります。これは、プラークと呼ばれ、動脈硬化がかなり進んだ結果です。プラークは繊維や白血球の死骸、脂質などで出来ています。油分の多いプラークは破れやすく、破れるとそこで血液が固まって脳梗塞の原因となります。プラークのある症例では、厳格に血圧やコレステロールを下げる必要があります。あまりにプラークが大きすぎて、血管が詰まりそうな場合には、脳外科で手術をする場合もあります。
上野循環器科・内科医院 上野一弘