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聴診器

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月報 「聴診器」 2012/05

月報 「聴診器」 2012/05/01

冬が終わったとおもったら、急に暑くなりました。それでも、東北では今が桜の時期ですし、北海道ではスキーができます。日本は広いですね。

 

14 雑談 ⑥がっかり大規模臨床試験その2

うまくいかなかった大規模臨床試験の続きです。

(3)ACCORD: 糖尿病を対象にした試験です。糖尿病は血液中の糖分が高くなり、このことが原因で全身の血管に動脈硬化が進む病気です。糖尿病では、全身の臓器の血管が動脈硬化化を起こしますので、目が見えなくなったり、脳梗塞を起こしたりします。こうした合併症を防ぐためには、きちんと血糖値を下げるのがよいとわかっています。具体的には、UKPDS試験ではHbA1c 7.0以下、KUMAMOTO studyではHbA1c 6.4以下にすることで、網膜症、神経障害、人工透析(腎不全)が減ることがわかっていました。それでも、糖尿病がない人に比べると予後はよくありません。「それでは、もっともっと血糖値を下げれば、予後はよくなるのではないか。」と、多くの医者が考えました。ACCORD試験はそんな期待をもとにはじめられた研究です。カナダやアメリカで糖尿病の患者さんを、緩やかに血糖値を下げるグループと徹底的に血糖値を下げるグループに分けて経過が観察されました。ところが、大方の予想に反して、厳格血糖コントールグループのほうで死者が多くなり、試験は途中で中止されました。血糖を徹底的に下げたグループのほうが、予後悪かったのです。このニュースも大きな衝撃をもたらしました。たくさんの疑念も寄せられましたが、ADVANCE試験などのほかの試験でも同様な結果が出ました。詳しい解析では、厳格に血糖コントロール治療を行った際に低血糖発作が多いと予後が悪くなることがわかりました。今のところ、糖尿病はHbA1c(NGSP)7.0以下をめざし、低血糖を起こすほどの治療は望ましくないと考えられています。

(2)COURAGE:安定狭心症を対象にした試験です。狭心症とは心臓の周りの血管が細いために胸が苦しくなる病気です。長く症状に変化がないものは安定狭心症と呼ばれています。こうした症例では、カテーテルによる治療が行われています。カテーテル治療を行えば、症状がなくなります。また、狭いところはそのうち詰まって心筋梗塞を起こし命を脅かすかもしれません。狭いところを広げれば、心筋梗塞を防げ、寿命が延びるとも期待されていました。COURAGE試験では安定狭心症の治療として、カテーテル治療の薬物治療に対する優位性を確認するために行われました。しかし、結果は、期待に反してカテーテル治療と薬物治療に予後の差が出ませんでした。カテーテル治療を行っても予後の改善にはつながらなかったのです。僕も昔は一生懸命カテーテル治療をしていましたので、この結果にはがっかりしました。どうやら、血管が狭いところがつまるのではなく、一見狭くなさそうな血管でも急に動脈硬化が進行すると、血管がつまってしまうようです。

この研究からわかったことは、カテーテル治療は安定狭心症の症状をコントロールにするのには役に立つが、予後を改善するには薬物治療が必要ということです。カテーテル治療を行っても、血液をサラサラにする薬やコレステロールを下げる薬は飲み続けたほうがよいということです。もっとも、不安定狭心症や重症多枝病変では話が変わってきます。これらの疾患では、生命の危険がまじかに迫っている状態なので、速やかにカテーテル治療やバイパス手術が必要になります。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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