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月報 「聴診器」 2015/06

月報 「聴診器」 2015/06/01

皆さんは「本屋大賞」をご存知でしょうか?全国の本屋さんが面白いと思った本を投票で決める賞です。今年の本屋大賞は上橋菜穂子さんの「鹿の王」でしたね。「鹿の王」は架空の国での部族抗争の話ですが、感染症と医療が重要な位置を占めています。医学的考察はかなりしっかりしていて、免疫学的説明も非常に優れています。このため、日本医師会が主催する日本医療小説大賞も受賞しました。先日の朝刊には日本医師会の横倉会長と上橋さんとの会談も乗っていたのでご覧になった方も多いと思います。ファンタジー小説なので子供から大人まで楽しめると思いますよ。

19 心臓リハビリテーション③ 心臓リハビリテーションの実際

心臓リハビリテーションは、予後の改善や入院の減少に効果があります。ただし、やみくもに運動をすればよいということではありません。やりすぎはかえって危険性が増すこともあります。心臓リハビリテーションでは運動自体に特殊な体操や器具を使用することはありませんが、有酸素運動を行うことが重要になります。有酸素運動の中身はエルゴメーターでもいいし、歩行でもダンスでも構いません。有酸素運動についいては2月の「聴診器」で触れました。体の組織への酸素供給量に見合った運動量のことで、体によけない負担をかけない運動強度です。有酸素運動の運動強度の指標には心拍がよくつかわれます。年齢に応じた最大心拍数の60%程度の心拍数を目安にするとよいといわれています。よく使用されている式では、(220-年齢)x 0.6で有酸素運動時の目標心拍数が割り出されます。しかし、心疾患のある方では事情が異なります。正常な場合は運動とすると心拍数が上昇するとともに一回ずつの心拍出量が増加します。このため、一分当たりの心拍出量は速やかに増やされます。しかし、心疾患のある方では、一回ずつの心拍出量が落ちていることがあります。このため、心拍数があがってもすぐに一分間あたりの心拍出量は上がりません。また、不整脈があったり、ペースメーカー調律になったりしているせいで、心拍数による指標そのものが役に立たない場合があります。薬の影響で運動しても心拍数が上がらなくなっている場合もあります。このため、専門施設では心肺負荷装置という特殊な機械を使用して有酸素運動を計測しています。

有酸素運動中は、体に酸素分子一つが取り込まれると、二酸化炭素分子が一つ吐き出されます。吸気時と呼気時の酸素と二酸化炭素の測定を行えば、すった酸素の量と吐いた酸素の量から摂取した酸素量がわかります。吐いた二酸化炭素の量もわかります。心肺負荷検査では、測定器の付いたマスクをはめてもらったまま運動をしてもらい、運動強度を徐々に強くしていきます。最初は有酸素運動が行われているので、酸素摂取量と二酸化炭素排出量は同じです。ところが、運動強度が強くなると無酸素運動の代謝領域に達してくるので、二酸化炭素の排出量が酸素摂取量よりも増えてきます。この時点の、運動強度や心拍数を記録して「無酸素運動閾値(AT)」とします。限界まで運動してもらった時点の酸素摂取量が「最大酸素摂取量」で、その人の潜在的な体力を表しています。心臓リハビリテーションでは、このATを超えない強度で運動をしてもらうようにしています。

実際の運動中には安全を確保することが大事になります。医学知識のあるスタッフによる事前のチェックをおこない、運動中は心電図モニターを付けることが必要です。運動中に心拍数が上がりすぎないか、危険な不整脈が出ないかを見るためです。心臓リハビリテーションでは、週に1-3回、一回30分程度の運動をおこなうと効果があるといいます。一番大切なのは、運動療法を続ける気持ちだと思います。

上野循環器科・内科医院 上野一弘

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