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聴診器

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月報 「聴診器」 2015/12

月報 「聴診器」 2015/12/01

今年もあと一か月となりました。早いですね。今年は心臓リハビリテーションの開設というビックイベントがありましたが、皆様のおかげで順調に乗り切ることができました。ありがとうございます。よかったこと、楽しかったことだけ覚えて来年に臨みたいと思います。

20 狭心症2 ⑥狭心症の治療 冠動脈バイパス術

狭心症の治療で、薬物治療、カテーテルでの治療と説明してきましたので、今回はバイパス手術の説明になります。バイパス手術は文字通り冠動脈の狭窄部位を迂回(バイパス)して血流を確保する手術です。当初は、足の静脈を摘出し、それをバイパス血管(グラフト)としていました。大動脈に小さな穴をあけ、静脈グラフトを吻合し、逆端を冠動脈に吻合する方法です。その後、内胸動脈を使用する方法も開発されました。内胸動脈は胸壁の前面を走行しており、少し走行を変更するだけで、心臓に近づきます。特に左内胸動脈は冠動脈左前下行枝の近傍を走行しますので、自然のバイパス血管として使用できます。現在では複数のバイパスを行う際には、内胸動脈と静脈グラフトを併用します。冠動脈は三本あり、右冠動脈は心臓の右側、左前下行枝は心臓の前面、左回旋枝は心臓の裏側を走行します。例えば、右冠動脈と左回旋枝には静脈グラフト、左前下行枝には左内胸動脈を使用することが多いようです。右内胸動脈を左前下行枝に、左内胸動脈を左回旋枝に吻合するパターンもあります。まれな例では、手の橈骨動脈を摘出して使用したり、胃の動脈の走行を変えて冠動脈に吻合することもあります。実際にどのようにバイパス血管をデザインするかは、病変部位や吻合予定の血管の走行、病院の考え方で異なります。

心臓は絶えず動いていますので、そのままではうまく吻合できません。そのため、バイパス手術の際には、心臓を止めて行われます。この間は、人工心肺を使用して体を維持します。手術が終われば、再度心臓を動かし、人工心肺から離脱します。しかし、人工心肺の使用にはいろいろなリスクがあります。人工心肺使用中は、血栓ができやすく脳梗塞などの塞栓症のリスクが増えます。このために抗凝固薬を投与しながら人工心肺を使用しますが、逆に出血が多くなってしまうこともあります。心臓を一回とめますので、弱った心臓では心拍が再開しないこともあります。

最近では拍動下でも心臓を固定できる特殊な器具が開発されたおかげで、人工心肺を使用しないでバイパス手術ができるようになってきました。オフポンプバイパス手術と呼ばれます。手技的には難しいようですが、手術時間が短時間で済み、合併症も少なく、入院期間も短くて済みます。拍動下で吻合するので、高度な技が必要とされますが、バイパスの開存率は人工心肺下手術と遜色ないようです。オフポンプバイパス術は急激に広まり、今ではバイパス術の約半数がこの術式で行われています。

さらに、最近でロボットを使用した手術も行われています。完全自動化されたロボットではなく、医師がモニターを見ながら、器具を遠隔操作するものです。開胸はせずに、棒状の器具を胸腔に入れて、内視鏡的に行います。行っている医師は、成功率も高いと発表していますが、危険性を危惧する医師もあります。今のところ、ロボットを使用した冠動脈バイパス術は、保険適応にはなっておらず、行っている病院もわずかです。なお、他の臓器では、ロボット手術が保険適応になっている病気もあります。

上野循環器科・内科医院 上野一弘

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