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月報 「聴診器」 2016/01

月報 「聴診器」 2016/01/01

あけましておめでとうございます。年齢とともに時間のたつのが早くなるといいますが、本当にこの一年はあっという間でした。いくつかの目標は達成でき、成果を残すことができました。一方、未達成のものもあり、また新たな課題もできました。今年も努力を惜しまず前進したいものです。

20 狭心症2 ⑦狭心症の治療 治療法の比較

前回まで狭心症の治療を説明してきました。では、どの治療法が優れているのでしょうか。

日本での狭心症の治療は、カテーテルを使用したものが主流です。カテーテルで狭窄血管を広げると、直後の造影はとてもきれいになります。一方、冠動脈バイパス術は胸に大きな傷が残るし、手術は怖い感じがします。薬物療法だけで狭窄部をそのままにしておくのも不安です。カテーテルでの治療は局所麻酔で行われ、手首に小さな傷ができる程度です。入院期間も2-3日で済みます。同じような効果が得られるならば、冠動脈バイパス術よりもカテーテル治療を選択する人が圧倒的に多数だとおもいます。しかし、カテーテル治療が一番すぐれているわけではありません。

2007年にCOURAGE研究が発表されました。これは、カナダで行われた狭心症を対象にした臨床試験です。強力な薬物療法を行った患者さんにカテーテル治療を行った症例と行なわなかった症例の長期予後を比較したものです。カテーテル治療を行った群では初期に胸部症状は消失しました。しかし、長期的に見ると心筋梗塞の発生率や生命予後は改善しませんでした。これは、かなりの衝撃をもたらし、それまでのカテーテル治療を見直すきっかけとなりました。まずは、狭窄部位が心筋梗塞を起こすのではないということです。狭い血管を広げても、別の部位にあった不安定プラークの被膜が破けて心筋梗塞を発症してしまうのです。心筋梗塞の予防には、カテーテル治療ではなく薬によるプラークの安定化が必要でした。つぎに、重症度を見た目だけで判断していたことの反省です。それまで、狭い病変をみるとすぐにバルーンやステントで広げていました。しかし、その中には、見た目は狭いけど、血流は減ってない血管も含まれていました。今ではプレッシャーワイヤーや血管内エコーを利用して、本当に血流が減っている血管だけを治療するようにしています。

以前は多くの病変を持つ症例や、左主幹動脈の症例に対してもカテーテル治療が行われていました。カテーテル治療を行っているグループ内では、より困難な症例を治療することが競われていました。僕にも苦い思い出があります。狭心症の患者さんを総合病院に紹介したところ左主幹動脈を含む複数病変が見つかりました。患者さん本人が手術を希望されず、カテーテル治療を選択されました。しかし、治療中に血管が閉塞し、その患者さんは亡くなってしまいました。

バイパス術にも手術時の合併症があるのは事実です。しかし、長期予後の改善は認められており、特に複数病変の症例や左主幹動脈の症例ではカテーテルよりも優れています。今ではSYNTAX scoreなど国際的な指標が作られ、カテーテル治療のリスクが高い症例についてはバイパス術を勧めるようになっています。

カテーテル治療が悪いというわけではありません。特に、心筋梗塞や不安定狭心症など急性期の治療については必要不可欠な治療法です。一方、不必要な治療はしないこと、薬物治療はきちんとおこなうこと、無理な治療はしないことが大切です。それぞれの病変に合わせて、治療法を選択してもらいましょう。

上野循環器科・内科医院 上野一弘

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