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月報 「聴診器」 2017/01

月報 「聴診器」 2017/01/01

新年あけましておめでとうございます。昨年は「まさか」が多かった年でした。熊本地震、イギリスのEU脱退、トランプ大統領、博多駅前陥没、SMAP解散。今年はどんな年になるのでしょうか?多くの人が幸せを感じられる一年になるといいですね。

22 弁膜症2 ⑤弁膜症の手術 TAVI

前回は、弁膜症の手術について説明しました。胸と心臓を切り開く手術です。ところが、近年、驚くべき手法が開発されました。カテーテルで手術を行う方法です。

これまでも、僧房弁狭窄症ではカテーテル治療が行われてきました。風船を広げて、狭くなった僧房弁を広げる方法です。PTMCと呼ばれます。しかし、大動脈弁疾患では圧力が高く、カテーテルのアプローチも困難なため無理と思われてきました。風船で広げるだけでなく、弁置換術となると方法すらも思いつきませんでした。ところが10年ほど前に海外で風船で広げるタイプの人工弁が開発され、実験的な治療が始まりました。通常は、カテーテルは大動脈側から大動脈弁に挿入しますが、どうしても困難な場合には心臓からアプローチをするそうです。どうやって?なんと、心尖部からカテーテルを突き通すのです。最初の論文が発表された時には「なんて野蛮な‼!」とびっくりしたのを覚えています。論文では周術期の死亡率が高く、正直、すたれるだろうと思っていました。しかし、手技や器具がどんどん洗練され、日本でも行われようになりました。ドイツではこの経カテーテル的大動脈弁修復術(TAVI)はかなり多く行われるようになり、開胸的大動脈弁置換術は減少傾向にあるそうです。

TAVIでは足の血管からカテーテルを挿入します。大動脈弓部で折り返して、大動脈弁に到達します。ここで、ガイドワイヤーを大動脈弁に通します。大動脈弁狭窄症では大動脈弁がかなり狭くなっていますのでガイドワイヤーを通過させるだけでも結構大変です。大動脈からのアプローチが困難な場合には、少しだけ胸を切開し、心筋を貫通させてカテーテルを挿入します。次に折りたたまれた状態の人工弁を大動脈弁の場所に持ってきます。場所が決まれば風船を開いて人工弁を拡げます。人工弁を大動脈壁に圧着させればカテーテルを抜去して終了です。もちろん、大動脈アプローチと心尖部アプローチでは使用する器具が異なり、人工弁が逆向きについています。TAVIでは人工弁のサイズを拡げる位置がとても重要になってきます。術前には3DCTや経食道心エコーなどで詳細な検査をすることが必要になります。手術中も透視だけでなく経食道心エコーでモニターしながら行います。風船で膨らませている間は、電極で心臓を頻回に刺激します。人工的に頻拍性不整脈を起こして、心拍出量を少なくすることで大動脈にかかる圧負荷を軽減するためです。ほとんどの病院では、手術中は全身麻酔を行います。

TAVIのメリットは心臓を止めなくてもよいことです。高齢であったり、担癌患者であったり、脳梗塞のリスクや肺疾患がある場合などには、開胸的手術は行われません。今までは、そうした患者さんには内服加療だけしか方法がありませんでした。TAVIの登場で治療の選択肢が広がったことはとても喜ばしいことと思います。最近では、中程度のリスクの人にもTAVIのほうがいいのではないかと言われ始めています。福岡では小倉記念病院、九大病院、久留米大学病院で行われています。

 

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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