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聴診器

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月報「聴診器」4月号発行しました!

月報 「聴診器」 2018/04/01

3月には日本循環器学会が大阪で開催されました。

3日間、ホテルやコンベンションホールを3つ借り切って行われる非常に大きな学会です。参加者は2万人になり、海外からの参加者も年々増えてきています。僕も毎回参加していますが、若い医師の優秀さには驚きます。学術的に高度な内容で、理論構成もしっかりしています。プレゼンテーションも華麗で、英語のスピーチは流暢です。医療現場の疲弊が心配されていますが、今後の医療業界は人材豊富だと明るい気持ちになりました。

 

25 先天性心疾患②、心房中隔欠損症

前回は成人と胎児の血液循環について説明しました。今回からは、具体的な先天性心疾患について説明していきます。先天性心疾患は沢山の種類がありますが、比較的よく見るものもあれば、非常に珍しい世界でも数例というものもあります。心房中隔欠損症は、比較的よくある先天性心疾患のひとつです。

正常では、酸素の少ない静脈血は右心房に還り、隣の左心房には肺で酸素をもらった動脈血が満ちています。上水道と下水道のようなものです。この二種類の血液が混じらないように、右心房と左心房の間に壁があります。この壁が「心房中隔」です。発生初期の心臓にはこの心房中隔はありません。胎児期のおわりごろに徐々に壁ができてきます。ところがこの壁が不十分なまま生まれてくる場合があります。するとこの壁に穴が開いた状態になってしまいます。これが「心房中隔欠損症」です。心房中隔欠損症では右心房と左心房の間に穴が開いていますので、両方の血液が混じってしまいます。普通は左心房のほうの圧力が高いので、左心房から右心房に血液が流れます。右心房には全身から還ってきた静脈血と左心房からの動脈血が流入します。右心房の入る血液量が正常より増えるわけです。増えた血液は右心室から肺へ流れ左心房に還ってきます。左心房に還ってきた血液の一部は再び右心房に流れ、後の血液は左心室から大動脈に出て行きます。このため、肺の血流量は増大し血管がいたんだり、肺の血圧が高くなったりしてしまいます。また、体をめぐる血液量はやや減少するため、心不全を起こしたりします。ただし、心房中隔欠損症があれば必ず、心不全や肺高血圧を来たすわけではありません。穴が小さい場合は、少量の血液しか左心房から右心房に流れませんので、肺や全身への負担は小さくなります。自然に閉じて、治癒してしまうこともあります。一般的には肺血流量が2倍以上あれば積極的な治療を勧めます。

新生児や幼児で、心雑音がしたり心電図や胸部レントゲン写真で異常があったりすれば、先天性心疾患を疑います。心エコーを行い、心房中隔に穴を認めたり、血流検査で左心房から右心房への血流が確認されれば心房中隔欠損症の診断がつきます。その後、カテーテル検査などを行い、心臓の状態を正確に調べます。治療は、手術をして心房中隔の穴を閉じるのが一般的で確立された手技です。最近ではカテーテルを使って、より簡単な方法での治療も開発されています。

今は、小児期からのスクリーニングシステムが確立されているので、心房中隔欠損症が見逃されていることはほとんどありません。しかし、高齢者では他の疾患のチェック時に偶発的に心房中隔欠損症が見つかる場合があります。ほとんどは、欠損孔が小さく特に治療の必要がないものが多いのですが、時には不整脈や心不全を引き起こしている場合もあります。足の静脈に出来た血栓が、心房中隔欠損孔を通って動脈に入り脳梗塞を起こす場合もあります。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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