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聴診器

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月報「聴診器」 10月号発行しました!

月報 「聴診器」 2018/10/1

9月は急に涼しくなりました。酷暑がやっと収まって過ごしやすくなったと思いますが、なぜか感染症が増えました。風邪や感染性腸炎も多くなりましたが、肺炎が多くなったのが印象的でした。俗にいう「夏のつかれ」ってやつですかね。

 

26 循環器トピックス②  弁膜疾患のカテーテル治療

弁膜症に病態やその治療については、別の項で詳しく説明しました。その際にすこし、カテーテルによる治療について触れています。大動脈弁が狭くなった場合に、以前は開胸開心による大動脈弁置換術しか方法がありませんでした。胸骨を切開し、体外循環装置をセッティングし、心臓を止めて、心臓を切り開く方法です。病んだ大動脈弁を除去し、人工弁を据え付けます。歴史のある治療法で、手技やデバイスは確立されています。大手術ですが、経験の豊かな病院で、適した症例に対して行えば成功率も高い方法です。ただし、「適した症例」というのが問題になってきます。一回心臓を止めて、心臓を切り開きますので、手術に耐えられない症例が存在します。例えば、超高齢者や合併症の多い例では、手術のリスクが高く、開心的大動脈弁置換術は適応から除外されます。カテーテルによる治療では、開胸や開心は行いません。しぼめた状態の人工弁がカテーテルの先端に装着されたデバイスを使用します。これを末梢の血管から挿入し、大動脈弁まで運びます。そこで人工弁の内側の風船を膨らませて、人工弁を拡げます。もともとの大動脈弁は除去しません。人工弁はもとの大動脈弁を押し広げる形で固定されます。もちろん、カテーテルによる手術にも固有の困難さや合併症があります。それでも、体への負担が比較的小さいので、従来の大動脈弁置換術ではリスクが高いと判断された症例でも、治療が可能となりました。開発された当初は合併症や死亡率が高かったのですが、最近では治療成績が改善しています。ノウハウが蓄積されてきたことと、当初の症例が高リスク症例に限定されていたことが原因ではないかと思います。日本でも高リスクで重症な大動脈弁狭窄症への適応が認可され、カテーテルによる大動脈弁置換術が行われています。福岡でも九大や小倉記念病院、徳洲会病院などが認可施設となっています。ヨーロッパでは、中等度リスクの症例にも行われるようになり、開心的大動脈弁置換術とカテーテル手術症例では同程度の症例数となっています。将来的には日本も、カテーテルによる大動脈弁置換術がもっと多くなるだろうと予想されています。ただし、この手技は開発されて数年しかたっていないので長期的予後が不明です。ひょっとしたら、将来思いもよらない問題が出てくるかもしれません。また、開心的大動脈弁置換術は効果と安全性が確立されており、カテーテルによる大動脈弁置換術のほうが優れているわけではありません。この点を考慮して、早急な適応拡大には慎重な意見もあります。

カテーテルによる手術は大動脈弁だけではありません。僧房弁に対しても行われます。僧房弁閉鎖不全症は僧房弁の閉じが悪く、血液が逆流する病気です。開心的に弁置換術を行うか、弁修復術を行います。カテーテルを使用した治療ではクリップを使用します。クリップ?そう、クリップです。カテーテルについたクリップで僧房弁の後尖と前尖をくっつけます。そうすると、僧房弁は開放時に8の字に開くことになります。閉鎖時には、ずれが解消されているので、逆流が減るわけです。正直、違和感のある方法ですが、結構、効果があるそうです。特に左心機能が低下した症例や、機能的な僧房弁閉鎖不全症に効果があるのではないかと期待されています。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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