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聴診器

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月報「聴診器」2月号発行しました。

 

月報 「聴診器」 2024/02/01

毎年1月は心不全が悪化する方が多くなりますが、今年は特に多かったような気がします。寒さや感染症が引き金になることもありますが、多くは食生活の悪化が原因のようです。冬の食事は塩分が多くなりがちで、特におせち料理は保存のためかなり塩分が濃くなっています。また、一回濃い塩分に慣れてしまうとその後の食事でも、「濃い味」を求めるようになってしまいます。「お正月だけだから…」とおせち料理を食べて、その後もついつい塩分が濃くなり、足が浮腫んで来院されることが度々あります。

塩分過多によって心不全が悪化する場合も、すぐには症状は出ません。静脈は肺循環の圧力が多少高くなってもある程度までは血管外に濾出しないようになっているためです。しかし、この状態が続くと、ある日突然肺が浮腫んで息ができなくなります。皆さん、冬の塩分過多には十分注意してください。

32 検査2 超音波検査② 心エコー

前回は超音波検査の概要を説明しました。今回からは超音波検査の各論です。まずは、心臓超音波検査の説明です。心臓は胸のやや左側にある臓器でこぶしぐらいの大きさをしています。超音波は肺と肋骨を通りませんので、それらを避けるようにして検査をします。最初は胸骨左縁の第三肋間ぐらいから心臓を縦に切るような断面で検査をします。次に心臓を横断するような断面で観察します。ここで、プローブの位置を左わきにずらすと、心臓を下から観察することができます。それぞれの場所から、心臓の形態、動き、血流を観察します。

まずは、Bモードで形態と動きを観察します。上行大動脈、左心房、左心室の大きさ、左心室の壁の厚さなどを測定します。肥大型心筋症や高血圧では左心室壁が厚くなります。拡張型心筋症では左心室が拡張し収縮が低下します。心筋梗塞では左心室の一部の動きが悪くなります。心室の動きが悪い場所に血栓が見つかるときもあります。弁の異常を認める場合もあります。弁狭窄症では、弁が石のように硬くなっていたり、開きが悪くなったりしています。弁に異常構造物が付いている場合もあります。感染性心内膜炎では弁に菌の塊がつくことが知られています。腱索断裂ではちぎれた腱索がぴらぴらと見えます。弁の枚数が違う場合もあります。正常の大動脈弁は三枚の弁から構成されていますが、大動脈二尖弁症では弁が二枚しかありません。先天的に心臓に穴があいているのが見つかる場合もあります。

左心室の動きは様々な方法で数値化します。左心室が広がった時の直径と縮んだ時の直径の比をとることで、心臓の収縮率を数値化することができます。ただし、心臓は立体的なものですのでこの方法では正確に測れない場合もあります。断面図を利用しての測定ではもう少し正確に心臓の収縮率を測定できます。左心室が広がった時の断面積と収縮時断面積を2方向から測定して収縮率を計算します。

ドップラー法では血流を観察します。血液は心臓の中を一方通行で流れますが、逆流を防ぐために四つの弁がついています。弁の閉じが悪ければ、血液は逆流します。ドップラー法では血液の流れている方向が分かるので、弁膜症で血液が逆流しているのを観察することができます。ドップラー法では血液の流れる早さも分かります。早さが分かれば圧格差を知ることもできます。ドップラー法を利用すれば、心エコーで心臓のむくみ具合や弁膜症の程度を知ることができます。

                          上野循環器科・内科医院  上野一弘

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