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月報「聴診器」 12月号発行しました!

月報 「聴診器」 2018/12/1

当院の玄関横にカーポートがつきました。皆さん気づかれているでしょうか?これは、「雨の日に、足の悪い患者さんが濡れてかわいそう」とのスタッフの声がきっかけです。恥ずかしながら、僕自身はスタッフから指摘されるまでカーポートの必要性に気が付きませんでした。反省するとともに、細やかな心遣いができるスタッフと一緒に働けることを嬉しく思います。

 

26 循環器トピックス④  拡げるべきか、否か

心臓の血管の検査をして、冠動脈が狭ければ「狭心症」や「虚血性心疾患」の診断が下されます。そして「カテーテルで狭い血管を拡げましょう」と説明があり、経皮的冠動脈形成術が行われます。術後の造影では冠動脈がきれいになっており、患者さんも、医者も満足します。果たしてそれが正しいのでしょうか?僕も勤務医のころは当たり前のようにカテーテルで血管を拡げていました。しかし、ある時から風向きが変わります。

心筋梗塞を起こした人で以前に冠動脈造影をしていた患者さんを調べた研究が発表されました。事前にわかっていた狭窄部位と、血管が詰まって心筋梗塞を起こした部位を比較しています。すると、事前の造影検査ではそれほど狭窄がなかった部位が詰まって心筋梗塞をおこした症例が多かったのです。それまでは何となく狭い血管がそのまま詰まって心筋梗塞になると思っていましたが、どうやら違うようなのです。かなり衝撃的な報告でしたが、血管内エコーを使用した研究でも狭窄はそれほどなくても脂肪が多く含まれている部位で、血管が詰まってしまうことが分かってきました。これを防ぐためにはコレステロールをより下げるとよいこともわかってきました。その後、さらに衝撃的な研究が発表されました。狭い血管をカテーテルで拡げたグループとカテーテル治療を行わなかったグループを比較したものです。もちろん両グループとも適切な内服治療が行われています。結果的にはこのふたつのグループの間に予後の差はなかったのです。極論を言えば、カテーテル治療には寿命を延ばす効果がなかったのです。

「いやいや、そんなことはないはず」と多くの循環器内科医が思いました。狭いだけで血管を拡げるのはダメだろうけど、血流不足があればやっぱり拡げた方がいいんじゃないか、との考えでプレッシャーワイヤーを使用した研究が行われました。この結果では、血流不足があるような血管にはカテーテル治療をした方がいいと報告されました。この結果には多くの医師が納得し、現状では胸部症状や血流不足があればカテーテル治療をすべきとの方針で治療が行われています。

しかし、最近さらに踏み込んだ研究が発表されました。カテーテル治療と偽カテーテル治療を比較した研究です。偽カテーテル治療?つまり、血管に針を刺してカテーテル治療をするふりはするけれども実際には血管を拡げない行為です。日本では考えられない研究ですが、プラセボ効果(思い込み効果)を除去するために必要な処置です。この結果では、予後も患者さんの症状も両群間に差はありませんでした。カテーテル治療をして症状が改善するのは「気のせい」との結論ですが、本当なのでしょうか?正直、にわかには信じられません。

「拡げるべきか、否か」の論争は難しく、はっきりとした結論は出ていません。しかし、①しっかりした内服治療を続けること、②重症病変や緊急時にはカテーテル治療が必要なこと、③軽度の狭窄にはカテーテル治療は不必要であること、の3点は動かない真実のようです。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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