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月報「聴診器」 4月号発行しました!

月報 「聴診器」 2019/04/01
3月29日から横浜で第83回日本循環器学会学術集会が開催されました。日本有数の大きな学会で多くの循環器専門医が集います。僕も演題が採用されましたので、皆様にはご迷惑をおかけしましたが、29日30日は休診にして発表を行ってきました。かなり緊張して、前日はあまり眠れませんでしたが、無事に役目を終えることができました。座長の梅本先生(自治医科大学)からは高い評価を頂き、望外の喜びを味わいました。いくつになっても褒められるとうれしいですね。
学会もどんどん大きくなり、立派な国際学会になっています。今回も多変勉強になりました。得られた知見が少しでも臨床の現場で役立てられるように精進したいと思います。

26 循環器トピックス⑥ 再生医療
カテーテル治療の進歩やCCU(Coronary Care Unit)の充実などで心筋梗塞の救命率は改善し、生命予後もよくなっています。しかし、いったん壊死してしまった心筋はそのまま再生はせず、結合組織に置き換わるだけです。大きな心筋梗塞を起こせば、広い範囲の心筋が壊死し、その後は機能の低下した心臓と一生を送らなければなりません。また、冠動脈があちこちで狭くなり、カテーテル治療やバイパス術ができない症例もあります。このような患者さんに対して、さまざまな薬や治療が開発されある程度の成功を収めていますが、最重症例の治療は今でも難しいのが現状です。心臓移植は非常に優れた治療法ですが、ドナー数が限られているため、必要な患者さんすべてに出来る治療ではありません。
再生治療は循環器医の長らくの夢でした。死んでしまった心筋細胞や血管を復活させることができたらどんなにいいでしょう。不可能ではないはずです。例えば、トカゲは尻尾を切って逃げますが、その後尻尾を再生することができます。多くの生物が組織再生能力を有しており、人間も肝臓や末端組織では再生可能なことが知られています。その再生能力のメカニズムを応用すれば、心臓の再生もできるはずです。
血管の再生では、当初は機械的な方法が考えられました。動脈硬化が進んで血管があちこち詰まってしまった心臓に衝撃波を与えたり心臓の中からレーザーで多数の穴を開けたりする方法です。機械的刺激の修復過程で血管が新生するのを期待したわけです。少数例の報告では症状の緩和や心機能の改善が認められました。しかし、多くの症例では期待されたような効果は認められませんでした。次に行われたのはサイトカインを利用する方法です。サイトカインとはホルモンのような生体物質の一種ですが、狭い範囲に働いて細胞や組織に一定の働きをさせます。1980年代に、血管新生因子(VEGF)が発見され、血管新生に関与していることが分かりました。VEGFは癌や糖尿病性網膜症なども血管新生を促しています。バイオテクノロジーの進歩でVEGFも合成できるようになりました。このVGEFを使って、心臓に血管を増やそうという試みです。そのままでは心筋に定着しなのでベクターというウイルスの殻のようなものに入れて心筋に打ち込みます。動物実験や、少数の臨床試験では効果があるようです。大規模臨床試験では効果がはっきりしなくなるので、評価が分かれています。それでも、研究を続けているグループもたくさんありますので将来有力な治療になるかもしれません。
上野循環器科・内科医院  上野一弘

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