月報 「聴診器」 2020/04/01
新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)はさらに広がりを見せています。欧米での惨状は皆さんもご存じと思います。福岡や宗像市でも感染例が報告されるようなっています。明らかな感染源が不明な市中感染もじわじわ増えています。無症状病原保有者からの感染があるのかもしれません。いわゆる隠れ感染者の存在です。感染状況からして、隠れ感染者がすごく多いわけではないと思います。ただし、隠れ感染者は自覚がなく、だれが感染者かわからないのが問題です。これを読まれている貴方かもしれませんし、僕かもしれません。この状況ではだれもが感染していると考えて行動するのが得策と思います。当院では、①患者さんにはマスクや手の消毒をしていただきます。待合室での会話はできるだけ控えていただき、距離を開けて座ってください。車で待っていただくのもよいと思います。②スタッフは毎日健康チェックをし、診察時は標準感染予防を行います。③症状がある方には、防護をしたスタッフが別室で診察を行います。
患者さんにはお願いがあります。コロナ肺炎は主に中高年者や基礎疾患がある方が死に至る病気です。しばらく、バスツアーや合唱の練習などはやめてください。気軽に病院に来るのも勧められません。タバコはやめて、お酒は減らし、糖尿病の人は甘いものを控えてください。また、各地で医療者に対する差別的な行いが問題になっています。コロナ肺炎の治療を行っている病院のスタッフがタクシーに乗車拒否されたり、子供が保育園から断られることがあっているそうです。ある県では、感染した医療者を知事が糾弾していました。医療者は最前線で自らが感染するリスクにさらされながら患者さんのために戦っています。遠からず、宗像でもコロナ肺炎の治療をする病院や感染する医療者が出てくると思いますが、皆様には感謝と励ましをお願いします。
27 高血圧2-⑥
前回までは、心臓、腎臓、脳と高血圧の関係について説明してきました。恐ろしいのは、どの臓器障害も一方通行なことです。人間の臓器の多くは再生しません。いったん臓器に障害が起これば、その障害自体は元に戻ることはありません。臓器障害を防ぐためには、血圧を下げることが一番です。では、どこまで下げたらよいのでしょうか。この降圧目標値は年々下がる傾向にあります。JSH 2019という日本の高血圧の最新ガイドラインでは130/80mmHg以下を目標値としています。高齢者では140/90mmHgを一応の目安としていますが、できれば130/80mmHgまで下げたほうがよいとされています。また、十分な血圧コントールがされていないのに、患者も医師も危機意識を持っていない現状に警鐘を鳴らしています。
血圧の薬については、下がりすぎを気にする方が多くいらっしゃいます。確かに、血圧が下がりすぎると脳や腎臓の血流が低下し、ふらふらしたりします。ただし、その影響は一時的なもので、再び血圧が上がれば症状も軽快します。後遺症を残すようなことはほとんどありません。
治療の基本は、減塩になります。日本人の一日平均塩分摂取量は10-12g程度ですが、一日塩分摂取量は6gを目指すようにいわれています。一日塩分が6gというのはかなり薄味です。さらに、高血圧の人の中には異常に多量の塩分を摂取している人が多いようです。「お漬物を食べるときに醤油をかける」「うどんやラーメンの汁は全部飲む」「外食メニューにもさらに醤油をかける」などの食生活をしている方は、かなり塩分過多です。これらのことをやめるだけでも、血圧は下がるはずです。なお、唐辛子やコショウ、わさびなどの香辛料は血圧に関係ありません。
上野循環器科・内科医院 上野一弘