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聴診器

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月報「聴診器」2005/4

月報 「聴診器」 2005/4/1

やっと暖かくなってきましたね。4月です。僕も、後輩が技術を覚えてくれたので、木曜日に少しは診療できるようになりました。これからは、木曜日の9時から11時まで診療をします。今までご迷惑をおかけしました。

3.心筋梗塞⑥ 心筋梗塞、慢性期の治療

これまでは、主に心筋梗塞の急性期の治療について説明して来ました。急性期の治療がひと段落し無事退院しても継続的な治療が必要になってきます。

心筋梗塞を起こした心臓には慢性期にも様々な心配が出てきます。心臓の動きが悪いため、全身の臓器が血液不足になったり、体がむくんだりします。心不全です。心臓の一部が動かなくなると重症の不整脈を起こすこともあります。また、一度心筋梗塞を起こした心臓は、再び心筋梗塞を起こすことが多くなってきます。これら、①心不全、②致死性不整脈、③再梗塞が心筋梗塞慢性期の主な死因となります。

心不全の予防、治療のためには様々な試みがされてきました。当初は、心臓の収縮力を増す薬が使用されてきました。強心剤です。しかし、様々な研究から、強心剤の使用はかえって寿命を短くすることがわかってきました。最近では、血管を拡げて血圧を下げることで心臓の負担を減らす治療が効果を挙げています。弱った心臓は鞭打つのではなく、仕事を減らして長持ちさせるほうが良かったんですね。その中でも、ACE阻害剤、ARB、ベータブロッカー、アルドステロン拮抗剤などの薬に優れた効果があることが知られています。

不整脈については、当初は通常の抗不整脈薬を使うことで致死性不整脈を防げると思われてきました。しかし、これも間違えだったことがわかってきました。心筋梗塞の慢性期に普通の抗不整脈薬を、漫然と使うと帰って寿命が短くなってしまったのです。その後、アミオダロンという薬とベータブロッカーにある程度、致死性不整脈を予防する効果があるのがわかってきました。しかし、致死性不整脈に対しては、薬よりも植え込み型除細動器(ICD)の使用が劇的な効果をあげています。ICDは名刺ぐらいの大きさの機械で通常胸に埋め込みます。リード線がついていて、血管の中を通して心臓まで達しています。このリード線を通じて心臓の動きを見張っていますが、重症不整脈が起これば、電気ショックをかけて脈拍を正常化します。心筋梗塞以外の重症不整脈を有する疾患でもこのICDが威力を発揮します。一度でも重症不整脈を起こしたことのある人は、ICDを入れたほうが良いといわれています。特に心筋梗塞を起こした人では危険性が高まりますので、ホルター心電図などで不整脈のチェックをする必要があります。

一度心筋梗塞を起こした人は、再び心筋梗塞を起こすことがよく有ります。これは、体質的に動脈硬化が進みやすいためです。ただし、動脈硬化の進行には体質だけでなく、他の要因もかかわってきます。糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、肥満や喫煙です。心筋梗塞の再発予防には、これらの病気のコントロールとともに禁煙、減量が大事になってきます。最近では、コレステロールがあまり高くない人も、コレステロールの薬を飲むことで再発が減るといわれています。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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