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月報「聴診器」7月号発行しました!

月報 「聴診器」 2019/07/01
6月はあまり雨が降りませんでしたね。気候は穏やかでしたが、なぜか風邪にかかる人が多かったですね。ほかにも、だるいと訴える人が多かった気もします。実は僕もだるさを感じていましたが、原因はよくわかりません。7月は雨が多くなりそうです。油断することなく、水害への備えを考えたいですね。

26 循環器トピックス⑧ 糖尿病
以前から糖尿病は心臓病の原因になることが知られていました。糖尿病は全身の動脈硬化が進む病気です。細かい血管に動脈硬化が進めば、網膜症になったり、腎症になったりします。もう少し大きい血管に動脈硬化が進むと心筋梗塞や脳梗塞になります。最近は、高血糖が直接心筋を傷害して心不全を引き起こすこともわかってきました。逆に、心不全を発症すると糖尿病を発症しやすいこともわかってきました。
糖尿病の薬を使用して血糖コントロールを改善させると、網膜症や腎症などの合併症が減ります。しかし、心筋梗塞や脳梗塞は思ったほど減りませんでした。より強力に血糖コントロールを行ってみた研究もありましたが、血糖を下げすぎると死亡率が上昇し、心筋梗塞は減らないことが確認されました。その後は、むしろ糖尿病薬でなく、血圧やコレステロール値を厳格にコントロールすることで心筋梗塞が減ることが分かってきました。また、ある種の糖尿病薬では心不全が悪化することも報告されました。心臓病の予防について抗糖尿病薬は気まずい立場になっていました。
2015年に衝撃的な論文が発表されました。SGLT2阻害薬という新しいタイプの糖尿病薬を使用すると、心筋梗塞の発生が減り、心不全での入院が減り、死亡率も減るとの内容でした。SGLT2阻害薬は余分な糖を尿に出して血糖値を下げる薬ですが、発売当初は、尿量が増えて脱水になる心配や、膀胱炎をおこしやすくなることなどが危惧され、あまり評判はよくありませんでした。試験は、この薬で心臓疾患が増えないことを確認する目的でした。しかし、実際に解析を行うと、予想以上の効果が得られたのです。抗糖尿病薬で心疾患が減るというのは衝撃的でしたし、心不全改善についても従来の心不全治療薬に匹敵する効果でした。その後、同タイプの薬で同じような結果が確認されています。特に、心不全の予後改善効果は注目を集めています。これは、体重減少効果、血圧低下作用などで心臓の負担を減らす働きだけでなく、直接心筋を保護する作用があるのではないかと言われています。また、糖尿病による心筋障害を防ぐ働きがあるだろうとも推測されています。糖尿病の薬ですが、低血糖をきたしにくい薬ですので、心不全治療薬として使用できるかどうかも検討されています。
続いてGLP-1アナログというタイプの薬でも心血管病が減ることが報告されました。これは、血糖を上げるホルモンと下げるホルモンを調節する薬です。少し食欲が減って、体重も減ります。この薬を投与すると動脈硬化の進行が穏やかになるようです。今は注射しかありませんが、内服できるタイプも開発されているそうです。
血糖降下作用は昔からの薬のほうが強いのですが、長期予後を考えるとGLP-1アナログやSGLT2阻害薬ほうが優れているようです。 実際の処方数も、これらの薬が増えてきているそうです。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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