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聴診器

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月報 「聴診器」 2005/6

月報 「聴診器」 2005/6/1

アッと言う間に6月ですね。蒸し暑くなってきましたね。食中毒がはやりだす季節です。ご注意ください。

 

4弁膜症② 僧帽弁疾患

前回は、弁膜症についてその概要をお話しました。心臓には、逆流を防ぐために弁が4つあります。それぞれの弁が不調になると弁膜症になります。今回は、左心房と左心室の間にある僧帽弁について考えてみましょう。

僧帽弁では、左心房が収縮して左心室に血液を送るときは、弁が開いて血液が流れるようにします。次に、左心室が収縮して血液を大動脈に送ります。このとき、僧帽弁が閉じて血液が左心房に逆流するのを防ぎます。僧帽弁の開きが悪くなると、血液の流れが悪くなり、心臓に負担がかかります。「僧帽弁狭窄症」という病気です。

僧帽狭窄症になると左心房から左心室へ血液がスムーズに流れませんので、左心房が腫れてきます。左心房の腫れがひどくなると、肺もはれてきて息苦しくなります。心不全です。また、左心房に負担がかかるため、不整脈がよく出るようになります。僧帽弁狭窄症に合併する不整脈の代表は心房細動です。心房細動では血栓を作り脳梗塞を起こすことがありますが、僧帽弁狭窄症では左心房が大きくなっているため、血栓がよりできやすくなります。軽症の僧帽弁狭窄症では、内服薬で心不全や不整脈、血栓症のコントロールを行いますが、重症例では手術が必要になってきます。手術は、心臓を切り開いて弁を取り替える場合や、足からカテーテルを使って行う方法などがあります。

逆に僧帽弁の閉じ方が悪くなってしまう病気もあります。僧帽弁閉鎖不全症です。僧帽弁閉鎖不全症では左心房から左心室に血液が流れるときには、ちゃんと、弁が開きますが、左心室が収縮して血液を大動脈に送り出すときには、血液が左心房に逆流してしまいます。左心室が収縮するときには、強い力がかかり、左心室内は高圧になります。本来ならば、僧帽弁がこの圧力に負けないように、きちんと閉じて血液の逆流を防いでいます。しかし、僧帽弁閉鎖不全症では僧帽弁がきちんと閉じないため、圧力の高い左心室から圧力の低い左心房に血液が逆流してしまうのです。逆流量が多ければ、やはり、左心房に負担がかかり、左心房が拡大します。また、結果的に左心房から左心室へ行く血液も多くなりますので左心室も拡大していきます。重症例では左心室の収縮も悪くなります。左心房への逆流量が多ければ、肺の血管までむくんできます。特に急激に僧帽弁の閉じが悪くなれば、急激に肺がむくんで呼吸困難になります。たとえば、僧帽弁をつないでいるヒモ(腱索)が切れると、急性僧帽弁閉鎖不全症を来たし、急性心不全となります。以前、H元首相がこの「検索断裂による急性僧帽弁閉鎖不全による、急性心不全」のため緊急手術を受けています。他にも、感染症や弁のずれ、リウマチ熱などが僧帽弁疾患の原因となってきます。

実は、軽症の僧帽弁閉鎖不全症は非常に多く認めます。エコーをすれば10人中5人ぐらいは軽度の僧帽弁閉鎖不全症が見つかります。ただし、これの病的意義は余りありません。重症になれば手術が必要ですが、軽症から中症であれば薬物治療で十分です。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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