月報 「聴診器」 2006/1/1
新年あけましておめでとうございます。以前から懸案だったテレビをつけてみました。いかがでしょうか。少しでも待ち時間が楽しく過ごせるとよいのですが。
5心筋症④
前回までは、心臓の筋肉自体の異常で起こる病気、拡張型心筋症や肥大型心筋症についてお話をしてきました。これらの心筋症がなぜ起こるかは正確にはわかっていませんが、遺伝的な異常や感染症が関与していると考えられています。
ただし、心筋症の中には他の病気に引き続いて起こるものがあります。これを続発性心筋症や二次性心筋症と呼びます。
高血圧性心臓病;続発性心筋症で一番多いものです。血圧が高いとその血圧に対抗して、心臓は収縮をしますので、このため心臓の筋肉が厚く硬くなります。そのまま高血圧が続けば、そのうち心臓の収縮が低下し、心不全を起こすようになります。
サルコイドーシス性心筋症;サルコイドーシスは肺や皮膚、目などに結節を作る病気です。基本的には良性の病気ですが、心臓に結節を作ると不整脈や突然死の原因となったりします。
アミロイドーシス;アミロイドと呼ばれる小さな物質が体の隅々にたまる疾患です。胃腸の粘膜にアミロイドが貯まると下痢や消化不良が続いたりします。神経にたまれば手足がしびれてきたり排尿が困難になったりします。心臓にたまれば、心筋が厚ぼったくなったり脈拍が遅くなったりします。末期には心臓の周りに液体がたまり心不全となります。
筋ジストロフィー;先天的に筋肉が障害を受ける病気です。全身の筋肉が弱ってくるため歩行がしにくくなってきます。病気が心臓にまで波及すると、心臓の動きが悪くなります。
皮膚筋炎;膠原病の一種で、自分の皮膚や筋肉に対する自己抗体が出来て炎症を起こす病気です。全身の筋肉が弱まってきますが、心臓まで波及すれば心臓の収縮が弱くなります。
リンパ腫;血液の病気の一種です。全身のリンパ節が腫大していきます。心臓に腫瘤を形成し、不整脈や心不全の原因となることがあります。
頻拍惹起性心筋症;頻拍性不整脈が続くと心臓が疲れてしまって動きが悪くなります。アブレーションなどで頻拍の治療が出来れば、心臓の動きも元に戻ります。
いずれの続発性心筋症でも源疾患の治療が第一になってきます。心筋症を疑ったときには、これらの疾患をチェックすることも大切です。
上野循環器科・内科医院 上野一弘