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聴診器

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月報 「聴診器」2005/12

月報 「聴診器」 2005/12/1

いよいよ師走ですね。今年もあっという間に一年が過ぎました。皆様にとっては良い年だったでしょうか。良かった人も、そうでなかった人も来年はいい年になるといいですね。

 

5心筋症③

今回は不整脈源性右室心筋症(Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy: ARVC) についてお話をします。耳慣れない病気と思いますが、確かに非常に珍しい病気です。日本全国でも200名前後しかいないと思います。けれども、以前僕はこの病気の研究をしていたので、ちょっと話をさせていただきます。

40年ほど前にイタリヤで列車事故がありました。山から下ってきた列車がブレーキをかけずに終点の駅に突っ込んでしまったのです。どうやら運転手が気を失ってブレーキがかけられなかったようです。大勢の人と一緒に運転手も亡くなりましたが、その運転手はこれまで特に病気は指摘されていなかったそうです。遺体を解剖してみると右心室が異常に大きく、心筋に脂肪がたくさん混じっていました。このから、この運転手はARVCで不整脈を発症したために失神し大事故につながったのだろうと推測されました。

心筋梗塞や弁膜症、拡張型心筋症の存在は早くから知られていました。これらは、左心室の病気です。ふつう、医者が「心臓」や「心機能」というときは「左心室」や「左心室機能」の話をしていることが多いです。心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があります。このうち、左心室は全身に血液を送っている部屋であり、一番大事な部屋です。左心室が止まれば人間は死にますし、動きが悪くなれば心不全を起こします。他の3つの部屋が止まっても、多少の不具合は生じますが、命に別状はきたしません。ところが、原因不明の突然死を起こす人たちの中に、右心室が異常大きく、右心室の心筋に脂肪組織が浸潤した症例が多く存在するのが分かって来ました。このような症例を多く集め、新しい心筋症としてF.Marcus医師とG. Fontane医師が1982年に発表しました。原因不明の突然死の解明につながると注目され、その後同様の症例が世界中で見つかりました。最近では猫や犬にもこの病気が発症することが知られています。

ARVCでは徐々に右室心筋が障害を受け、脂肪に置き換わっていきます。このため、右心室の収縮力が低下し、右心室が拡張してきます。右心室の筋肉が傷害されているため、そこから不整脈がよく出てきます。特に、心室頻拍などの致死性不整脈が多く見られます。この不整脈が突然死の原因になるのです。しかし、左心室は正常な場合が多く心不全症状などは早期には出現しません。したがって、これまでは無症状であったのに突然不整脈が出現して失神したり、死亡したりすることになります。

ARVCでは心電図にε波と呼ばれる特徴的な波形が認められ、心エコーでは右心室の拡張が認められます。ただし、こういった特徴的な所見にかける症例もあり、カテーテル検査や心筋生検(心臓の筋肉を少し採ってきて、顕微鏡で調べる検査)が必要な場合もあります。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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