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聴診器

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月報 「聴診器」 2007/2

月報 「聴診器」 2007/2/1

 

「あるある大辞典」が話題になっていますね。今回は捏造が発覚したとのことで槍玉にあがっているようです。それでも、類似の番組は大人気のようで、なんだか不思議に思います。こうした、健康番組は話半分に聞いておくのがいいのではないかと思います。万病を防ぐすばらしい食品というものは存在しませんが、食品はそれぞれ体に必要なものを含んでいます。バランスよく、適量を食べていただくのが一番だと思います。

 

8 高血圧①

さて、今回からは高血圧です。当院でも多くの方が高血圧で通院されています。日本全国では3500万人の高血圧患者さんがいるといわれています。実に、国民の4人に1人が高血圧症と考えられています。なぜ、高血圧患者さんはこんなに多いのでしょう?それは塩分のためと考えられています。

生命は今から約35億年前に海で誕生したといわれています。海には塩分が豊富にあり、生物はこの塩分を使って生命を維持し活動してきました。それは、単細胞生物から、魚のような複雑な生物になっても続いていました。この時代の生物は、海水から塩分を十分に摂取でき、そのまま排泄していました。ところが、生物が陸上に上がってくると事情が少し違ってきます。陸上には酸素は十分にありましたが、塩分はほとんどなかったのです。そこで、生物は塩分を大切に使う仕組みを発達させたと考えられています。本来腎臓から出て行く塩分を途中で再吸収する仕組みです。少量の塩分摂取で生きられるようになった陸上生物は、その後大繁殖をします。

しかし、我々人類が誕生し文明を生み出すと事情が異なってきました。確かに、塩分は生物にとって大切なものです。いくら再吸収する仕組みが合っても、塩分が全く手に入らなければ生物は死んでしまいます。生物は必要なものをおいしく感じるようにできています。当然、塩分は大変おいしく感じます。お肉でも、野菜でも、穀類でも塩をかけるととてもおいしくなります。おいしいものは沢山欲しくなります。文明は欲しいものを大量に作ることが出来ます。人類は多量の塩分を手に入れることができましたが、体の仕組みは動物と同じようなものです。つまり、少量の塩分摂取を前提した体であるのに、多量の塩分を摂取することとなってしまいました。過剰な塩分は、循環血漿量の増加となり、血圧の上昇をもたらしてしまいました。逆にニューギニアの奥地などで文明の恩恵を受けていない集団では、塩分摂取量が極端に低く、高血圧症もほとんどいないといわれています。

文明が発達した現代では、いまさら塩分の少ない生活には戻れません。しかし、世界的にみて日本の塩分摂取量は高くなっています。ヨーロッパでは1日6-7g、アメリカでは8-10gの塩分摂取量ですが、日本では平均で12gも摂取しています。厚生省は1日の塩分摂取量を10g以下にするように奨励していますが、なかなか進んでいません。

 

 

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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