月報 「聴診器」 2008/ 1/ 1
明けましておめでとうございます。暮れから急に冷え込んできましたね。おかげで、休み中は風邪をひいていました。皆様はどんな年明けだったでしょうか。楽しい一年だったらよいですね。
8 高血圧⑪ 高血圧の検査
今回からは高血圧患者様を診るときに行う検査について説明していきます。高血圧症に対する検査は大きく二つに分けられます。高血圧の原因に対する検査と、高血圧の結果に対する検査です。日本では高血圧症のうち8割以上が本態性高血圧症という、いわば体質的な高血圧ですが、1割程度二次性高血圧症がいるといわれています。これは、腫瘍や血管病変によって高血圧になるような病態です。このような二次性高血圧症は一般的な検査ではなかなか見つからないために、血圧を上げるホルモンを測定したり、血管の検査を行ったりします。これらについては、別項で説明するようにします。
高血圧が命を縮めるのはその合併症のためです。合併症がどの程度、どの臓器あるかによって治療の必要性や目標も変わってきます。胸部レントゲン写真では心臓の大きさと、大動脈の影を見ます。高血圧が長く続いて心臓に負担がかかっていれば心臓が大きくなっていることがあります。大動脈の動脈硬化がひどければ動脈の壁が石のようにかたくなってレントゲンに写るようになります。また、動脈が曲がったり、膨らんだりしているが分かる場合もあります。心電図もやはり心臓の負担を見ますが、心臓での電気のとおり方を調べます。心臓が弱っていれば、心臓での電気のとおり方が変化したり、不整脈が出現したりします。胸部レントゲン写真や心電図で異常が見られたり、聴診で心雑音が聞かれる場合には心エコーを行います。心エコーでは心臓の壁の厚さ、心臓の動きや硬さを見ます。弁膜症が見つかる場合もあります。検尿では主に蛋白尿をチェックします。高血圧によって腎臓が悪くなると、尿に蛋白質がもれ出てきます。蛋白尿が認められれば、すでに高度の腎障害があるはずなのでなるべく早めに厳格な降圧が必要になってきます。採血検査では腎機能障害を中心に見ていますが、肝機能や電解質(イオンのバランス)もチェックが必要です。肝機能障害がひどければ、使う薬に制約がでてきます。降圧薬によってはカリウム値が高くなるものもあるので、カリウム値が高めの症例では使用を控えるようにしています。また、異常にカリウム値が低い例では二次性高血圧症の可能性があるので精査を行うようにしています。脂質異常症や糖尿病など、ほかの動脈硬化促進因子のチェックも大切です。
以上は一般的行う検査です。これらの検査で合併症が見つかれば早期に治療が必要となります。合併症の多くは動脈硬化に由来するものです。動脈硬化そのものを調べる検査も行います。これは、少し長くなるので来月にお話します。
上野循環器科・内科医院 上野一弘