月報 「聴診器」 2009/02/01
インフルエンザが流行しています。最近はタミフルが効かないタイプも出現しているようです。ただし、インフルエンザそのものはあまり危険な病気ではありません。もともと、元気な人であれば、タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬を使用しなくても3-4日寝ておけば治ります。抗インフルエンザ薬を使用すると1-2日早く治ります。いずれにしても、しっかり寝ることが一番の薬です。
もっとも、高齢の方や心臓や肺が悪い患者さんがインフルエンザになった場合には危険が高くなります。この場合には、抗インフルエンザ薬を使用したほうがよいと思います。
10 脂質異常症② 動脈硬化-1
前回から脂質異常症について説明しています。脂質異常症とはLDLコレステロールが増えたり、中性脂肪が増えたりする病気です。脂質異常症だけでは、症状は何もありません。よく、「コレステロールが高くなると、血液がドロドロになって頭が重くなる。肩こりがする。」といいますが、そんなことはありません。これは、健康食品屋さんが作った宣伝文句です。脂質異常症では全身の血管に動脈硬化が進みます。動脈硬化が進めば狭心症や脳梗塞を起こし、この時点で初めて症状が出ます。ただし、この時点で脂質異常症の治療を開始しても動脈硬化自体が改善することはありません。
肝臓から血液に放出されたコレステロールは、LDLコレステロールの形で末梢の血管まで届けられます。そこで臓器に取り込まれホルモンや細胞構造の部品になります。血管に届けられるLDLコレステロールが多すぎると、LDLコレステロールは血管壁にもぐりこみます。血管は水道管のような構造をしていますが、その壁は内側から内皮、平滑筋、外膜の三層で構成されています。LDLコレステロールはこの内皮に取り込まれます。ここで、マクロファージという白血球の仲間がやってきます。マクロファージはLDLコレステロールをどんどん食べます。LDLコレステロールをたっぷり食べてパンパンに太ったマクロファージはそのまま、血管内皮で死にます。すると、血管内皮の中にコレステロールの塊が出来ることになります。これを繰り返していくと、血管壁に柔らかいぶつぶつが出来るようになります。このぶつぶつはお粥の粒のようにみえるので「粥状動脈硬化」と呼ばれます。このぶつぶつは時間とともに大きくなっていきます。大きくなったぶつぶつを、僕たちは「プラーク」と呼んでいます。プラークが血管の大半を占めるようになると、血流が悪くなります。例えば、心臓の栄養血管(冠動脈)で動脈硬化が進行し血管が狭くなると、狭心症を発症します。
プラークの中は脂が詰まっています。急な血圧の上昇などの血管にストレスがかかると、このプラークが破けます。プラークが破けると、脂と血液が直接触れ血液の塊が出来ます。血液は、血管以外のもの触れると固まる性質があるのです。この血液の塊を血栓と呼びます。血栓が血管を閉塞すると、そこから先に血液が行かなくなります。これが、心臓に起これば心筋梗塞であり、脳に起これば脳梗塞になります。
上野循環器科・内科医院 上野一弘