月報 「聴診器」 2009/09/01
新型インフルエンザがまた増えてきました。毒性は変わらないものの、7月の第一波よりも感染者の数はかなり増えています。今後、感染者の数はさらに増えてくると思います。
当院では、院内での患者さん同士での感染を避けるため、発熱のかたは午後に来ていただくようにお願いしています。また、車で来られたかたは、車中で検査をさせていただく方針です。ご面倒をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いします。
11 脳卒中③ 脳出血
今回は脳出血について説明します。脳出血は脳の血管が破れて出血をする病気です。血腫が脳を圧迫するため様々な症状が出ます。脳出血にはいくつかの種類があります。
ⅰ)クモ膜下出血:脳の表面の血管が破ける病気です。出血はクモ膜下腔という脳と頭蓋骨の隙間にたまります。出血をすると脳の表面の膜が刺激されるため、激しい頭痛が出現します。「今までに無い頭痛」「バットで頭を殴られたような痛み」などと表現されます。嘔吐や意識を失うことも多く、場合によっては心肺停止状態となります。診断はCTスキャンでなされます。ただし、出血量が少ない場合には診断が難しく、後日の再検査で分かったり、髄液検査で判明するときもあります。原因は動脈瘤という血管の瘤が大多数を占めます。脳動脈瘤では血管の分岐部によくでき、前回説明したウイリス動脈輪が動脈瘤の好発部位といわれています。くも膜下出血は家族内発生が多いことが知られています。家族にくも膜下出血の方が多い場合には、動脈瘤のチェックを行うことが勧められています。動脈瘤以外の原因としては、動静脈奇形、外傷などがあります。
ⅱ)脳内出血:脳の奥のほうの血管が破ける病気です。症状は破ける血管の場所によって異なります。大脳奥での出血では、半身の麻痺や言語障害、意識障害を呈します。小脳出血では頭痛やめまいなどを呈します。脳内で出血すれば血腫が脳を圧迫します。脳は圧迫されると腫れる為、さらに全体が圧迫されることになります。特に頭蓋骨の縁で脳が圧迫されると、脳の生命維持部位が損傷し、死亡することになります。
脳内出血の原因は高血圧が最も多いといわれています。現に、日本人の平均血圧が下がるにしたがって脳内出血の発症も減ってきています。血圧のコントロールが最大の予防策です。
ⅲ)外傷性脳出血:頭部への外傷に伴って出血をすることがあります。交通事故などでは急性硬膜外血腫や外傷性クモ膜下出血などをきたします。外傷時に脳出血が無くても、2-3ヶ月かけてじわじわ出血し、慢性硬膜下血腫を発症する場合があります。これは脳の外の膜と頭蓋骨の間に血腫ができる病気です。歩行障害、認知症症状、尿失禁などを呈します。症状が緩やかに進行するのでなかなか気づかれないこともあります。抗血小板剤を飲まれている方や高齢者などでは、軽くぶつけただけでも慢性硬膜下血腫が出来ることがあります。あやしい症状があれば検査を勧めます。
上野循環器科・内科医院 上野一弘