月報 「聴診器」 2009/12/1
ようやく、新診療所が完成しました。事務的な手続きもうまくいきそうなので12月初旬には移動できそうです。自動ドアですので出入りが楽になると思います。待合室も広くてきれいになります。検尿は専用のトイレと検尿コップ置きを使ってください。
新しい診療所では、今まで以上に良いサービスと、良い医療を提供できると思います。楽しみにしておいてください。
11 脳卒中⑥
麻痺などの症状が出て病院に行くと、医師は脳卒中を疑います。そこで、さまざまな検査をします。今回は代表的なものをいくつか説明します。
CT:脳の検査の代表です。一般に「頭の検査」と言えばこれを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。CTはレントゲン検査の一種です。あらゆる方向からX線を照射し、コンピューターでどの場所がどれぐらいのX線透過度かを計算し、画像にあらわします。人体の断面図を見るのでとても便利です。脳出血を起こせば、出血はCT画像では白く写ります。また、血腫が脳を圧迫している様子も分かります。これで、脳出血の有無、重症度などが分かります。脳梗塞の場合、発症してすぐにはCT画像には写りません。発症後しばらくすると黒っぽく見えるようになります。CTしかない施設では、脳卒中を疑いCTを撮った際に、脳出血や腫瘍がなければ脳梗塞急性期と判断しています。
MRI:CTと同じように体の断面が見られる検査です。一般には「出来のいいCT」のように思われていますが原理が全く異なります。すべての物質は原子から成り立っていますが、原子には小さい磁石のような性質があります。MRIでは強力な磁石を使用して水分子の磁性を操作します。物質によって中にある水分子への影響が異なるので、これを画像にしたものがMRI画像です。難しいですね。実は、詳しい理屈は医者もよくわかっていません。CTと比べると、組織の質的な差が分かりやすい利点があります。このため、脳出血の急性期だけでなく、脳梗塞の急性期も診断できます。ただし、単純にCTよりMRIが素晴らしいわけでなく、撮影時間や空間分解能においてはCTのほうが勝っています。また、CTよりもMRIのほうがかなり高価なので持っている施設も限られてきます。
血管造影:脳卒中は脳の血管の病気です。治療するときに脳の血管の情報が必要な時もあり、血管造影検査をする場合があります。検査では、カテーテルという細い管を足の付け根から挿入し、脳の血管に到達させ、造影剤を流し込みます。この検査でどの血管が詰まっているか、どこに動脈瘤があるかが分かります。最近ではCTやMRIでも血管の様子が分かるようになってきています。
超音波検査:脳卒中の分野でも超音波検査をする場合があります。経食道心エコーでは普通の心エコーでは見えにくい左心房を詳しく見ることができます。心源性脳塞栓の時には左心房に血栓を見つけることができます。頸動脈エコーでは頸動脈の狭窄度がわかります。
上野循環器科・内科医院 上野一弘