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聴診器

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月報 「聴診器」 2012/11

月報 「聴診器」 2012/11/01

感冒で受診する方が増えました。寒暖の差が激しいせいでしょう。風邪はウイルス性の感染症で安静にしておけば自然に軽快します。しかし、こじらせて肺炎を併発すると厄介です。今季も肺炎が増えだしています。風邪をひいたら薬を飲むことよりも、安静を第一にしておいてください。もちろん、禁煙禁酒です。

 

16 不整脈2 ②脈の増減

前回は心臓の大まかな構造と、電気の伝わり方を説明しました。洞結節で起きた電気が心房から心室に伝わり心拍を形成しています。洞結節で一回放電が起これば、一回の心拍が生まれます。つまり、洞結節のリズムが心拍のリズムなのです。それでは、洞結節の放電リズムはどうやって決まっているのでしょうか。これには、二つの要因があります。心臓そのものに由来する要因と、自律神経による要因です。

腕を動かしたり歩いたりする場合には脳が意識的に命令を出して、神経がそれを伝えています。一方、汗を出したり血圧を調節することも神経が行っていますが、これらは特に意識して行われるわけではありません。生体に必要な機能を無意識に調節している神経系があり自律神経と呼ばれています。自律神経には交感神経と副交感神経の二種類があります。活動時に優位になるのが交感神経で、安静時に優位になるのが副交感神経です。交感神経が刺激されれば洞結節の放電周期が短くなり、心拍数が上昇します。逆に副交感神経が有意な時は心拍数が少なくなります。激しく動いたり、ストレスが強ければ心拍数が増えるのはこの仕組みのためです。逆に寝ていれば心拍数は少なくなります。これらは正常な反応であり病気ではありません。

洞結節はそれ自体で、独立した固有のリズムを持っています。心臓だけを取り出して自律神経の関与をとってしまっても、栄養が補給されていれば一定のリズムで動き続けます。これは洞結節が自律的に放電を行っているからです。洞結節は3つの陽イオンを出し入れすることで固有の放電リズムを維持しています。なお、房室結節や心室筋も固有の放電リズムを持っていますが、通常は洞結節のリズムよりも遅いため、洞結節のリズムに支配されています。この洞結節自体のリズムが、加齢や電解質の異常などで変わることがあります。また、薬やホルモンの影響を受けてもリズムが変化します。

貧血や肺炎では交感神経が刺激されて心拍が早くなりますが、これは心臓そのものの異常ではありません。悩み事があったり、過労や睡眠不足でも脈拍が早くなりますがこれも交感神経の働きによるものです。また、交感神経をブロックする薬を飲んでいると心拍が遅くなります。認知症の薬では副交感神経を刺激して脈拍が遅くなることがあります。痛みがあれば交感神経が刺激されて脈拍が早くなりますが、強い痛みを我慢していると急に交感神経が優位になって脈拍と血圧が急に低下することがあります。急激に脈拍と血圧が低下すると失神する場合もあります。甲状腺機能低下症では心拍が遅くなることが知られています。逆に甲状腺機能亢進症では心拍数が増加します。カルシウム拮抗剤という薬の中には脈拍が遅くなるものがあります。強心剤にも心拍が遅くなる作用をもつものがあります。血管を広げる薬には心拍数が早くなるものもあります。

脈拍数の異常から心臓病を心配して相談される方も多いのですが、心臓病以外が原因の時もあります。                        上野循環器科・内科医院  上野一弘

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