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聴診器

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月報 「聴診器」 2013/02

月報 「聴診器」 2013/02/01

昨年末から厳しい寒さが続いています。毎朝、霜に包まれた車にお湯をかけています。雪もたびたび降っていますね。こんなに積もったのは久しぶりではないでしょうか。雪が降った日は、息子たちは大喜びではしゃいでいました。一方、犬はプルプル震えてすぐに家の中に入り、ストーブの前でじいっとしていました。歌とは大分違いますね。

 

16 不整脈2 ⑤脈が速い 心房粗動

前回は心房細動について説明をしました。脈拍がばらばらに早くなる病気です。似たような名前の病気に「心房粗動」というものがあります。こちらも脈が速くなりますが、比較的規則正しい脈が特徴です。心房細動では、心房のあちらこちらで放電が起こりますが、心房粗動では一定の場所から一分間に240-280回程度放電が起きます。このうち半分が心室に伝わり、一分間に120-140回程度の頻拍になります。心房粗動の多くでは、右心房の中を電気が旋回して発生します。これは通常型心房粗動と呼ばれます。ところで、旋回ってなんでしょうか?

心臓の筋肉は電気が流れるようになっています。これは心房も一緒ですが、通常では心房内を電気が伝わっても、電気が旋回することはありません。薄い金属の板を想像してみてください。端から電気を流しても、逆の端に伝わればそれでおしまいです。しかし、板の真ん中をくりぬけばどうでしょう。条件さえ合えば、電気は穴の周りをぐるぐる回ることが可能です。この現象はリエントリーと呼ばれます。心臓でリエントリー現象が証明される前に、発光クラゲで生体におけるリエントリー現象が証明されています。発光クラゲは刺激を受けると光る性質があります。クラゲの端をたたくとまずそこが光ります。その後、波のように光る部位が広がり、反対側で消えます。この発光クラゲの真ん中をくりぬいて、一方向に刺激を加えると光が穴の周りをぐるぐる回り始めます。

心房粗動では同じことが心房で起きています。右心房にはもともと右心室へ血液を送る穴があります。この穴には三尖弁が位置しています。この三尖弁の周りを電気が反時計方向に旋回し、通常型心房粗動が発生します。心房細動に対して抗不整脈薬を使用していると、電気の通り道が制限されて心房粗動になることもしばしばあります。

心房細動に比べ心房粗動は持続しやすく、心拍数コントロールも困難です。心不全をおこすこともあります。薬が効きにくいのも特徴です。また、安易に抗不整脈薬を使用するとかえって重症化することもあります。例えば、心房内での旋回リズムが280回/分の心房粗動を考えてみましょう。心房と心室の中継点(房室結節)は少し伝導性が鈍くなっていますので、心房波の半分を心室に伝え、心室は140回/分で収縮します。抗不整脈薬を使用し心房内のリズムが220回/分になったとします。心房のリズムが220回/分では房室結節が刺激を全部心室に伝えてしまうことがあります。心室が220回で収縮すれば、激しい胸痛や失神発作を起こします。心房粗動に薬を使用する場合は、まず房室結節の伝導性を落とす薬を使用することが重要です。

通常型心房粗動では旋回路が同定しやすいので、カテーテルでの治療が比較的容易です。弁膜症や、心臓手術後では思わぬところに電気の通らない場所ができ、その周りを電気が旋回することがあります。これは非通常型心房粗動と呼ばれ旋回路の同定が困難で、カテーテルでの治療が困難です。難しい三次元パズルを解くようなもので、逆にカテーテル治療専門医の能力の見せどころでもあります。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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