月報 「聴診器」 2005/11/1
急に寒くなってきましたね。風邪の患者さんも増えてきました。風邪は基本的には粘膜の病気です。粘膜は乾くと弱ってきます。風邪の予防のため、鼻やのどが乾かないようにしてください。
5心筋症②
前回は、拡張型心筋症の話をしました。拡張型心筋症は心臓がふくらんでくる病気です。心筋症の中には、心臓がふくらまずに、壁が厚くなってくる病気があります。これは肥大型心筋症と呼ばれます。
肥大型心筋症では、心臓の筋肉自身が病気になり、筋繊維一本一本が太くなってきます。心臓の筋肉が厚ぼったくなると、心臓が硬くなってきます。心臓は血液を送り出すと同時に血液を受け取っていますが、心臓が硬くなってくるとこの血液の受け取りが不得意になってきます。そうすると、一見心臓の収縮はいいのに心不全を起こしやすくなってきます。また、心筋が肥大すると不整脈がよく起きるようになってきます。脈拍は心臓の中に電気が流れることによって調節されていますが、心臓の筋肉がダメージを受けた状態では、この電気の流れが乱れて不整脈が起きやすくなっているのです。特に肥大型心筋症では、あまり病気が進んでない段階でも危険な不整脈が出ることがあります。中には、遺伝的に肥大型心筋症があり、突然死が多い家系も見つかっています。
肥大型心筋症の中でも閉塞性肥大型心筋症と呼ばれるものは予後があまりよくありません。これは、左心室の出口部分が狭くなって心臓に負担がかかる疾患です。左心室は大動脈から全身に血液を送り出しています。その左心室から大動脈へ向かう部分の筋肉が厚くなることがあります。厚くなると出口が狭くなってきます。狭くなってくると左心室が血液を送り出すのに余計圧力をかけなければいけなくなり、心臓の中の圧力が極端に高くなります。たとえば、全身の血圧が120mmHgぐらいでも心臓の中では200mmHg以上ある場合があります。圧力が高すぎると心臓が収縮できなくて動かなくなることもあります。この閉塞性肥大型心筋症に対しては、いろいろな薬物や、ペースメーカーで治療を行います。それでも、治療が困難な場合は手術で肥大した部位を切り取ります。最近では、カテーテルを使って肥大した部位を除去する方法も開発されています。
心電図異常や不整脈の患者さんに心エコーをすると心肥大が見つかることがあります。ただし、心肥大があればすべてが肥大型心筋症ではありません。多くは高血圧による心肥大で肥大型心筋症とは肥大のパターンがやや異なります。他にも、アミロイドーシスや弁膜症との鑑別も必要です。診断が難しい場合は、カテーテル検査や心筋生検を行う場合もあります。
上野循環器科・内科医院 上野一弘