月報 「聴診器」 2018/01/01
新年、明けましておめでとうございます。今年は戌年。なんと4回目の年男です。干支の最初の一周までは一生かかるかもと思うぐらい長かったのですが、3回目から4回目まではびっくりするぐらい早く過ぎました。この分なら5回目の年男はすぐきそうです。うかうかしていられませんね。
24 心不全⑦ 心不全の治療 その他
前回は心不全の治療について、薬物療法や生活習慣の改善などについて説明していきました。これらは統計的に効果がはっきりしている治療で、スタンダードなものです。今回は、特殊な治療について説明してきます。
両心室ペーシング:心臓が弱ってくると、心臓内での電気の流れが悪くなります。このため、心臓病が進むと心臓の収縮にばらつきが出てきます。収縮にばらつきが出ると、心筋のパワーを効率よく拍出量にすることができなくなります。両心室ペーシングは右心室と左心室に電線を入れることで、収縮のばらつきをなくす方法です。特殊な治療なので限られた施設でしか実施されていません。
バチスタ手術:最近は、ドラマや小説で触れられているのでご存知のかたも多いかもしれません。ブラジルのバチスタ先生が始めた治療法で「左室縮小形成術」とも呼ばれます。心臓の筋肉が弱り、心臓が異常に大きくなってしまうと、大きいためにさらに機能が低下する悪循環が起こってきます。バチスタ手術は大きくなりすぎた心臓の一部を切り取り小さくする手術です。効果がある症例とない症例の差があり、評価が分かれています。今では一部の施設のみで行っています。
VAS:植え込み型の補助ポンプを使用する方法です。いろんな機種がありますが、多くは左心室にパイプをつけて血液を抜き、ポンプで大動脈に戻す方法です。血液は全身>右心房>右心室>肺>左心房>左心室>補助ポンプ>大動脈と流れます。この方法はポンプに血栓がつきやすく、また感染症のコントロールも大変です。おもに心臓移植までの待ち時間を乗り切るために使用されています。
心移植:心臓そのものを取り替えてしまう方法です。生体間移植、異種間移植が不可能なので、日本ではまだまだ一般的にはなっていません。倫理的な問題、拒絶反応、感染の問題など、未解決な問題が多い方法ですが、根治的な方法でもあります。以前、友人が受け持っていた患者さんが心臓移植を受けましたが、劇的な改善にびっくりしました。九大でも先日22例目の手術が行われました。
ASV:重症心不全では呼吸が不規則になり、時々止まることがあります。ASVは鼻につけたマスクで呼吸をサポートする方法です。期待されていましたが、2016年に効果を否定する論文が発表されてから下火になっています。
上野循環器科・内科医院 上野一弘