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月報 「聴診器」 2015/05

月報 「聴診器」 2015/05/01

心臓リハビリテーション施設が稼働して一か月がたちました。予想よりも多くの方にご利用いただき、順調なスタートを切ることができています。利用されている方からは「楽しい」「体が動くようになった。」との声があり、大変うれしく思っています。ところで、マスコットマークはご存知でしょうか?これは、「アップ君」という名前で看護師さん手作りのキャラクターです。みんなでいろいろなマークを考えましたが、親しみやすくかわいらしいとの理由で、「アップ君」をマスコットキャラクターにすることとしました。皆さんと一緒に運動をがんばって、つらいときには励ましてくれるそうです。

19 心臓リハビリテーション② 心不全の運動療法効果

近年、心臓リハビリテーションの効果が注目されています。これは、心不全や心筋梗塞の治療の進歩とともに出てきた動きです。心不全は心臓の動きが衰え、体の需要に追いつかなくなっている状態です。心臓の動きが悪化すれば、十分な血液を体に送ることができなくなり、すぐに息切れがしたり、体がむくんだりします。入院治療を要するような心不全では予後は悪く、5年生存率が50%を切っていました。これは、がんの予後よりも悪い数字です。このため、心不全の治療が長年研究されてきました。当初は、強心剤など心臓の動きをよくする薬に期待がかけられていましたが、これらの薬はことごとく予後を悪化させました。薬を投与した患者さんのほうが早く亡くなってしまったのです。その後、心臓の負担をとるような薬で予後が改善することがわかってきました。今では、アンギオテンシン阻害薬、アルドステロン拮抗薬、βブロッカーなどが心不全の予後を改善することが確かめられています。これらの薬は重症心不全治療には必須となっており、世界中の心不全治療ガイドラインに組み込まれています。しかし、その後に期待されて薬や治療法ではさらなる改善効果は得られませんでした。2004年前後に運動療法が心不全の予後を改善するとの研究結果が発表されました。心不全を有する患者さんに、定期に有酸素運動をしてもらうと、入院が20%も減り、生命予後も改善するとの事でした。この数字は、薬物療法に匹敵するもので大きな驚きをもたらしました。それまでは、リハビリはあくまで日常生活までの復帰をサポートするものでしたが、治療として認識されだしたのです。その後の追試でも同様の効果が確かめられ、今はでは運動療法も治療ガイドラインで推奨されています。

心臓リハビリテーションがなぜ有効なのかはさまざまな検討がされています。まずは直接的に筋肉が増える事です。心不全患者では適切な労作がおこなわれず、骨格筋や呼吸器筋が減っていきます。このためにますます、軽労作での息苦しさが強くなり、さらに活動性が低下してしまいます。最近では、高齢者や心不全患者でも適切なトレーニングで筋力が増加することがわかっています。また、心不全患者では、運動時に血管が収縮しすぎて骨格筋血流が乏しくなり、さらに心臓の負担が増してしまいます。これも運動を続けると血管内機能が改善され、血管拡張療法と同じような効果をもたらすのであろうと考えられています。自律神経についても、運動療法で交感神経が抑制され副交感神経が優位になることが、わかっています。これは、βブロッカーと同じような効果があることを意味します。個々の病態にもよりますが、これらの複合した機序で、予後の改善効果をもたらすのでしょう。

上野循環器科・内科医院 上野一弘

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